TradeZeroをeToroが最大$231MでM&A合意、River MarketsにHaun Ventures等が$8.5M出資、など全8PJ【資金調達PJまとめ】
直近1週間の資金調達情報をまとめました。
おはようございます。 今日は「今週1週間(8/8〜8/14)の資金調達PJのまとめ」です。
💥調達金額上位5プロジェクト
1、TradeZero
概要:バハマ・ナッソーに拠点を置く、アクティブトレーダー向けの米国オンライン証券です。2015年創業で、手数料無料の株式取引、米国株と株式オプションへのアクセス、独自の株式空売り玉検索(short locator)を提供し、TradeZero America(2019年〜)、TradeZero Canada(2022年〜)、TradeZero Europe(2025年〜)を子会社に持ちます。今回、eToro が買収で合意しました。ここは正確にお伝えしたいのですが、まだクローズしていません。eToro の公式リリースは規制当局の承認を含む慣行的な条件付きで、2027年上期のクローズ見込みと書いています。対価は現金と新規発行の Class A 普通株式最大250万株を組み合わせた最大$231Mです。TradeZero の2026年6月30日までの直近12か月の売上は約$80M、粗利率は81%なので、買収額は最大でも売上の約2.9倍という水準です。eToro の Yoni Assia CEO は「今日の発表は、当社の米国事業を築くうえで重要な一歩です」と述べ、TradeZero の Daniel Pipitone CEO は「TradeZero はアクティブトレーダーによって、アクティブトレーダーのために作られました」とコメントしています。なお The Block は、同日に eToro が2026年Q2決算も発表しており、株式売買が業績を牽引する一方で暗号資産関連は減速した、という文脈でこの買収を報じています。
カテゴリ:Trading, Finance/Banking
調達額:最大$231M(”up to $231 million”・現金+新規発行 Class A 普通株式最大250万株)※未クローズ
投資ラウンド:M&A(合意段階/2027年上期クローズ見込み)
投資家:eToro(買収者)
発表日:8/11
2、River Markets
概要:予測市場(prediction markets)向けのプライムブローカレッジ、つまり機関投資家が複数の取引会場をまたいで売買するための執行・仲介インフラです。Kalshi や Polymarket といった会場ごとに接続を自前で作ると数か月かかるところを、1本の執行スタックにまとめて数分で取引を始められるようにし、大口注文をスリッページ最小で通す執行アルゴリズムを備えます。公式ブログによると提供開始は2026年5月1日で、初期の利用者には Kalshi と Polymarket の出来高上位10トレーダーのうち複数が含まれるとのことです。今回の$8.5MのSeedは ★Haun Ventures がリードし、Y Combinator、Coinbase Ventures、Qube Research & Technologies(QRT)、TENET といった名前が並びます。次に作るのは「取引会社が資本をより効率的に使い、格段に大きな規模で取引できるようにするインフラとモデル」だとしています。
カテゴリ:Prediction Markets, Finance/Banking, Trading
調達額:$8.50M
投資ラウンド:Seed
投資家:★Haun Ventures、Y Combinator、Coinbase Ventures、UFO Holdings、Qube Research & Technologies(QRT)、TENET、Humbition、Kima Ventures、Cherry Ventures、Stack Asset Management、Perpetual Strategies、Mark Kornfilt、Jacob Fortinsky(Novig)、および Citadel / Google / HRT / Tower Research Capital / NVIDIA / FalconX / Exodus Point / JP Morgan 出身のエンジェル
発表日:8/9(公式ブログ)/報道は8/11・ラウンドのクローズは7月
3、Entravel Group
概要:暗号資産取引所やフィンテック企業の「ホテル予約」の裏側を作っている会社です。持株会社として旅行の流通・仕入れ・決済・データの各レイヤーに事業を持ち、ホワイトラベル基盤の Entravel、ホテル在庫を集約して配信する Ratestellar、ホテルと直接契約して部屋を仕入れる MocatravelX、開発中の決済・清算インフラという4本立てです。40を超えるホワイトラベル基盤を構築し、220万軒超のホテルにアクセスできるとしています。創業は2023年、Founder & Group CEO は Mathias Lundoe Nielsen 氏で、BeBeez International は同氏を「デンマーク最年少のIPO創業者」と紹介しています。資金使途はサプライヤーへの与信枠の拡大、伝統的な旅行分野への進出、そしてステーブルコインを使った決済・トレジャリー・運転資金レイヤーの構築。クリプトの中の旅行から、旅行の中のクリプト決済へ出ようとしている会社、という位置づけになります。
カテゴリ:Entertainment/Travel, Payment, Web3
調達額:$7.50M
投資ラウンド:未公表(媒体により “Other” / “Seed” と表記が割れています)
投資家:★Ethereal Ventures、★Finality Capital Partners(共同リード)、GSR、Varrock、G1 Ventures、Seier Capital、Veris Ventures、Funfair Ventures、WTG Ventures
発表日:8/12
4、KiiChain
概要:Cosmos SDK と CometBFT で構築された、外国為替(FX)に特化したL1です。ステーブルコインと実物資産(RWA)のオンチェーンFX基盤を名乗り、中南米を中心とした新興国の越境決済に照準を合わせています。24時間365日の決済、スプレッド0.5%未満のステーブルコインFXスワップ、本人確認(KYC/KYB)のプロトコル階層への実装が特徴です。今回の$1Mは VC ラウンドではなく、Sonar(Echo)というプラットフォーム上のパブリックセールで集めたもので、そのため機関投資家のリード投資家は存在しません。なおセール告知に金額の記載はなく、$1M は集計ベースの数字です。KYC必須・最低参加額$10・USDC/USDTなどで受付という設計で、事前登録は9,450件、セールの終了が8/11でした(開始の告知自体は8/3です)。付与されるトークンは1年のクリフ(据置期間)を経て、その後2年かけて日次で権利が確定します。
カテゴリ:L1, Cosmos Ecosystem, Payment, Real-World Assets
調達額:$1M
投資ラウンド:Public sale
投資家:Individual investors(KYC付きのパブリックセールのため機関投資家の参加・リード投資家はなし)
発表日:8/11(セール終了日)※8/14にTGE・Kraken上場
5、Memebook
概要:Solana 上に構築された、Instagram に似たソーシャルアプリです。メールアドレスや電話番号といった個人情報を渡さずに Solana ウォレットだけでサインアップでき、写真・動画・テキストを投稿できます。認証もウォレットベースで、Solana Mobile のユーザーおよび他の Solana ウォレット向けの検証システムを備えます。配信は Solana Mobile dApp Store と Google Play Store の2経路です。今回のSeedは$1Mで、出資は TOF Ventures の単独。トラクションについては、Google Play の表示が50+ダウンロードで、DAU等の数値は公表されていません。4位の KiiChain と同額の$1Mなので、順位づけの根拠は強くありません。この$1Mは2026年のクリプトVCとしては小さい部類ですが、DeFiでもインフラでもない Solana 上のコンシューマー向けSNSにシード資金が付いた点は、今週のリストの中では毛色が違って見えます。
カテゴリ:Social Network, Solana Ecosystem
調達額:$1M
投資ラウンド:Seed
投資家:TOF Ventures(単独出資のためリード表記なし)
発表日:8/10(米国時間)
✨その他、3プロジェクト
Saturn[金額非開示/Strategic]:Strategy(旧MicroStrategy)が発行する STRC というデジタルクレジット商品の上に構築された、ステーブルコイン・プロトコルです。トークン化された米国債に100%裏付けられた非利回りのステーブルコイン USDat と、デジタルクレジットの配当が積み上がることで価格が上がる利回りボールト sUSDat の2トークン方式を採ります。今回、Ondo Finance が戦略出資し、同時に Ondo が発行するトークン化STRC「STRCon」を sUSDat に組み込むことが発表されました。
Digital Prime Technologies[金額非開示/Strategic]:ニュージャージー州ジャージーシティ拠点の、機関投資家向けデジタル資産レンディング基盤です。今回、プライムブローカーの LTP(LiquidityTech Protocol)が同社に戦略出資しました。狙いは同社のレンディング・プラットフォーム「Tokenet」のアジア太平洋展開で、金額は公式リリースに一切記載がありません。注目したいのは出資者の並びです。Tokenet には既に、証券貸借の業界インフラである EquiLend、そして Galaxy Digital と Marex が戦略パートナーとして入っており、LTP はそこに4社目として加わってアジア太平洋のリード戦略パートナーを務めます。同社の James Runnels CEO は「アジアに深く根を張った一流の機関向けプライムブローカレッジが加わることは、もうひとつの重要なマイルストーンです」、LTP の Jack Yang CEO は「機関投資家市場はますますグローバル化しており、デジタル資産のレンディングも地域単位の運用モデルを超えて進化しなければなりません」とコメントしています。なお同社は8/5にも Marex Group から戦略出資を受けており、1週間で2社の事業会社を迎えた形です。※8/12発表
RWA.xyz[金額不明/Seed(集計サイト登録のみ)]:トークン化された米国債・プライベートクレジット・コモディティ・ステーブルコインなどの市場指標や資産レベルのデータを提供する、実物資産(RWA)向けのデータ分析プラットフォームです。⚠️ ただしこの案件については、公表資料をひとつも確認できませんでした。同社の公式ブログの最新投稿は2026年3月17日で調達の告知はなく、英語で検索しても報じた記事が見つかりません。投資家とされる Neoclassic Capital の公式サイトも、そもそも投資先を一切公開していないサイトなので手掛かりになりません。確認できたのは「集計サイト(crypto-fundraising.info)の一覧に Seed / Neoclassic Capital として登録されている」という事実だけで、金額も発表日も確認できていません。
今週の見立て
今週は全8件で、前週の11件からさらに減りました。しかも金額の分布が極端です。TradeZero の最大$231Mを除くと、金額が開示されている残り4件の合計は$18M。1件が残り全部の13倍という構成で、今週の総額は実質的に eToro の買収合意1本で決まっています。そしてその1本も、まだクローズしていない合意です。規制当局の承認を待って2027年上期にクローズする見込みなので、実際に資金が動くのは早くても年明け以降ということになります。
もうひとつの特徴は、8件のうち3件で金額が出ていないことです(うち RWA.xyz は非開示というより、公表自体が確認できていません)。しかもそのうち2件、Ondo Finance から出資を受けた Saturn と、LTP から出資を受けた Digital Prime Technologies は、どちらも出資と業務提携がひとつのリリースになっているタイプでした。Saturn は Ondo のトークン化STRCを自社ボールトに組み込むことがセットですし、Digital Prime は LTP のアジア太平洋の顧客網に Tokenet を接続することがセットです。前号で「資本と業務が最初から抱き合わせになっている」と書きましたが、その見立てが2週続けて成立しました。
こういう案件で金額が出ないのは、たぶん金額が主役ではないからでしょう。Digital Prime に至っては、EquiLend・Galaxy Digital・Marex・LTP という顔ぶれ自体が格付けとして機能していて、いくら入ったかを知っても評価はほとんど動きません。金額欄が空いている案件ほど、出資者の顔と提携の中身を見に行く価値がある、というのが今週の読み方です。
領域としては、予測市場のインフラが2週連続で顔を出しました。前号の Fortune Protocol は複数の予測市場に散らばった流動性を1画面に集約する話で、今号の River Markets は複数の会場をまたぐ執行とリスク管理を1つのスタックに集約する話です。どちらも会場そのものではなく、その上に乗る配管に資金が入っています。予測市場が「イベントに賭ける場所」から「機関投資家が資産クラスとして扱う市場」へ移るには、まずこの配管が要る、という順番なのだと思います。
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