おはようございます。
今日は、7/14に閉幕したアジア最大級のweb3カンファレンス「WebX 2026」で日本企業が示した動きを、まとめてレポートします。
TL;DR
WebX 2026(2026年7月13〜14日・東京)は、CoinPost主催・経済産業省後援のアジア最大級web3カンファレンスで、来場は約15,000人規模とされます。
今年の主役はまぎれもなく日本の大手金融・事業会社でした。SBIのブロックチェーン戦略がCordaからSolanaへ大転換し、Startaleは機関向けオンチェーン金融基盤とVisaカードを発表、メタプラネットは証券会社をグループ化と、”発表の格”が一段上がっています。
なぜ重要かというと、テーマがステーブルコイン・RWAのトークン化・機関マネーという「実際にお金が動く領域」に集中したからです。しかも高市早苗首相が初日にビデオメッセージを寄せ、スタートアップ投資の拡大方針に触れました。
WebX 2026とは|アジア最大級のweb3カンファレンス
WebXは、暗号資産メディアCoinPostが企画・運営するアジア最大級のweb3カンファレンスです(主催は一般社団法人WebX実行委員会)。今年(WebX 2026)は2026年7月13日(月)〜14日(火)、ザ・プリンス パークタワー東京で開催され、昨日閉幕しました。経済産業省が後援し、来場者は主催者見込みで約15,000人規模とされます。
例年は海外プロジェクトの露出が目立つイベントですが、今年の空気は明確に違いました。登壇の中心が日本の大手金融・事業会社に移り、しかも各社が「構想」ではなく「発行するステーブルコイン」「取得した証券会社」「稼働する決済基盤」といった具体的な中身を持ち込んできたのです。以下、今回のWebXで存在感を放った日本企業の動きを、まず主役5件、続いてその他の動き5件の順で見ていきます。
基調講演・キーノート|大手が示した日本の勝ち筋
◼️SBIホールディングス 北尾吉孝会長【会場】
CRYLステージで約50分にわたる基調講演。「AIの完全導入」「オンチェーン金融」「ネオメディア」の3大戦略を掲げました。
目玉は次世代取引所構想で、ジャパンネクスト証券のPTS(私設取引システム)を金融商品取引所へ移行し、トークン化株式などを24時間365日・即時決済(T+0)・少額・ステーブルコイン対応・AI高頻度取引で扱う設計です(NTTのIOWN活用も視野)。米Ondo Financeとの戦略的提携の基本合意、bitbankの子会社化、ソラナ財団・Startaleとの協業にも言及しました(CoinPost、NADA NEWS)。
◼️シンプレクス 金子英樹社長【会場】track: AI×crypto
Binanceステージ単独基調「AIメビウスの輪と日本の活路」。AI利用料が米企業(Anthropic/OpenAI/NVIDIA/AWS/Microsoft/Google)を循環する構造のなかで、日本はその外側にある、と課題提起しました。
一方でWeb3については、日本がFX市場を築いた成功例を引き、「日本は市場を作れる」と主張。JPYC/JPYSCなどの円ステーブルコイン、RWA、アニメ・キャラクターIPに勝機があると語りました(CoinPost)。
◼️トム・リー(Bitmine会長)【会場・海外】
特別基調講演。イーサリアム(ETH)について、現在の約1,700ドル台から、1,846〜1,876ドルのレジスタンスを突破すれば次の目標は2,200ドルと語り、「イーサリアム2.0時代」「底打ちの戦術的シグナル」と表現しました。同氏が会長を務めるBitmineは574万ETHを保有しているとしています(CoinPost)。
◼️落合陽一【会場】track: AI×crypto
最終日のCRYLステージで「null²転生」をテーマに登壇。大阪・関西万博での展示(約60万人が体験)から、横浜ランドマークタワーの常設シアター「null²ⁿ」、さらに2027年国際園芸博の新作へと展開する構想を語りました。チケットシステムをAIエージェントに製作させ、従来見積り約1,000万円を約200ドル相当まで圧縮し、ウェイティングは約3.5万人に達したといいます。「知る文明から味わう文明へ」というメッセージで締めました(CoinPost)。
ステーブルコイン|円SCが実装フェーズへ
◼️SBI × ソラナ財団【開催週の発表】
SBIとソラナ財団が戦略提携し、SBI R3 Japanを「SBI Solana Global(仮称)」へ商号変更する予定です。変更前の議決権構成はSBIホールディングス51%/R3 35%/三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)14%で、財団参画後の構成は未開示です。狙いは、日本の金融資産・法制度をソラナのグローバルネットワークへ接続すること(あたらしい経済)。
◼️JPYSC 信託型円ステーブルコイン【会場】
パネル「JPYSCが描く信託型円SCの未来」で、Startaleの渡辺創太CEOは「ステーブルコイン単体でなく、オンチェーン金融インフラとして展開する」と語りました。信託型ゆえ、資金移動業の100万円送金上限の対象外になる点も論点です。
別パネル(Binanceステージ、モデレーターはCoinPostの各務貴仁氏)では、JPYCの岡部典孝代表とSBI VCトレードの近藤智彦社長が事業戦略を議論。市場は「合わせて約130億円規模」とされ、「1兆円」はSBI VCトレードの近藤社長がWebX 2027(1年後)の目標として語ったものです(岡部氏は「数十億→数百億→数千億へ」という段階像を示しました)(NADA NEWS、CoinPost)。
◼️SBI VCトレード「JPYSCレンディング」【開催週の発表+会場告知】
JPYSCを対象としたレンディングを開始します(信託型SCを対象とするのは国内初とうたっています)。申込は7月16日開始、貸出開始は7月23日予定で、当初は12週満期・年率3%。JPYSCはSBI新生信託銀行が発行し、SBIグループとStartaleが共同開発しています。近藤社長はWebXのJPYSCパネルでもこのレンディングを告知しました(あたらしい経済)。
◼️HashPort × KDDI × ローソン【開催週の発表】
円ステーブルコインの店頭決済実証で3社が基本合意しました(7月10日)。8月にローソン高輪ゲートウェイシティ店で、3社の一部社員を対象に実施します。顧客側は「HashPort Wallet」、加盟店側は「HashPort Wallet for Biz」を使う設計です。(あたらしい経済)。
◼️JCB × Circle【開催週の発表】
JCBとCircleがMOU(基本合意書)を締結し、USDCを使ったクロスボーダー決済と国内加盟店決済を検討します。初期段階では、JCBの社内資金移動のPoCを検討するとしています。7月14日発表です(あたらしい経済)。
◼️INSPAY × Mysten Labs【会場・出展】
WebXのINSPAYブース「G-42」で、Sui上のステーブルコイン「Sui Dollar(USDsui)」による自販機決済を体験デモしました(1秒未満・ガス代ゼロ)。両社はMOUで戦略提携し、ウォレットにはSlushを採用、USDC/JPYCにも対応する計画です(あたらしい経済)。
◼️JPYC × LINE NEXT「Unifi」【会場・出展】
日本円ステーブルコインのJPYCがゴールドスポンサーとしてWebXに参画し、LINE NEXTのステーブルコイン基盤「Unifi」と共同ブースを構えました。UnifiはJPYCにとって最大の流通経路になるとされます。なおUnifiへのJPYC採用自体は6〜7月に報じられていた既報で、WebXは両社が共同で露出する場という位置づけです(PR TIMES、JPYC公式)。
◼️3メガバンク 信託型共同ステーブルコイン【会期外の既報・会場でも議論】
三菱UFJ・三井住友・みずほの3メガバンクは、信託型の共同ステーブルコインをProgmat上で2026年度中に実取引へ進める計画です(倒産隔離により100%保護、B2B・クロスボーダー決済を想定)。これは2026年6月10日発表の既報ですが、WebXのパネル「3メガバンクのオンチェーン金融戦略」でも議論されました(みずほ銀行リリース、CoinPost)。
RWA・トークン化・国債|兆円市場への助走
◼️SBIグローバルアセットマネジメント × DigiFT「JX」【開催週の発表】
「SBI日本高配当株式戦略トークン(JX)」をソラナで提供開始しました(トークン化は7月14日)。基盤ファンドの純資産は約2,200億円で、決済はUSDCに対応、将来的にJPYSC対応も予定しています。DeFi連携ではMorpho/Gauntletの技術活用を予定。MASライセンス経由で、機関投資家・適格投資家に限定して提供します(あたらしい経済)。
◼️SBIグローバルAM × DigiFT × Startale 決済/分配PoC【開催週の発表】
トークン化した日本株ファンドについて、申込決済と分配金支払いのPoCをイーサリアムのテストネットで開始しました。将来的には秒単位の決済を目標としています。上記のJXとは別の発表です(あたらしい経済)。
◼️国債 × ブロックチェーン【会場】
パネルでは、担保の入れ替え時に一時的に余分な担保が必要になる問題(100億円の入替に200億円が必要になるケース)が論点になりました。削減対象は「アセットコスト」だとされます(三菱UFJ信託銀行 西澤明男氏)。
登壇はAva Labs 平田路依氏、デジタルアセット 東郷太郎氏、SMBC日興証券 磯野太佑氏、JPX総研 明間俊宏氏、モデレーターはProgmatの齊藤達哉氏。2030年のオンチェーン国債規模は数兆〜100兆円と、幅広い見通しが示されました(NADA NEWS)。
◼️RWA・MMF・トークン化証券【会場】
パネルでSecuritize Japanの小林英一氏は「2033年に世界のRWAは約3,000兆円規模、日本がシェア10%を維持するには300兆円規模が必要」「現状、パブリックチェーン上の日本市場は実質ゼロ」と指摘しました。ブラックロックの田中勇毅氏(トークン化MMFの3つの用途)、フランクリン・テンプルトンの湯浅光則氏も登壇しました(NADA NEWS、CoinPost)。
取引所・機関インフラ|機関マネーの受け皿づくり
◼️bitFlyer「bitFlyer Prime」【会場】
機関投資家・事業法人向けのエンタープライズサービスを発表しました(取引・カストディ・権限管理・リスク管理・レポーティング)。登壇は加納裕三CEOと金光碧CPO。あわせてロゴ/アプリを刷新し、3銘柄(TRX・ATOM・XDC)を追加、欧州MiCAのCASPライセンスも取得しています。「2014年以来、不正流出ゼロ」を訴求しました(NADA NEWS)。
◼️SBI × bitbank【会期外の既報】
SBIは暗号資産取引所bitbankを467億円で完全子会社化します(預かり残高は1.1兆円超で国内首位)。これは2026年6月25日発表の既報で、北尾会長が基調講演で改めて強調しました。株式譲渡の実行は8月頃、完了は10月頃の予定です(SBIリリース)。
◼️Startale OFK【開催週の発表】
金融機関向けのオンチェーン金融基盤「Startale OFK(Onchain Finance Kit)」を提供開始しました。ステーブルコイン基盤(JPYSC活用)/ウォレット/プライバシー/開発者/ブロックチェーン基盤(Strium・Soneium)の5領域をモジュール化しています。7月13日発表です(あたらしい経済)。
◼️Startale Card【開催週の発表】
ソニューム(Soneium)上の資産をVisa決済につなぐ自己管理型(self-custody)カードで、Startale Appで先行登録を開始しました。提供地域・時期は各国の法令に応じて順次としています。7月13日発表です(あたらしい経済)。
◼️Datachain Wallet【会場・出展+提携】
法人向けWeb3ウォレット「Datachain Wallet」の先行評価版を提供します(承認ワークフロー/マルチシグ、パスキー、ガスレス、SOC2 Type1)。WebX 2026に出展してデモを行いました。7月7日には三菱UFJ銀行との技術アドバイザリー提携も発表しています(あたらしい経済)。
ビットコイントレジャリー|「貯める」から「使う」へ
◼️メタプラネット【会場】
パネル「メタプラネットの次なる成長戦略」で、BTC保有は約43,000BTC(上場企業で世界3位・国内1位)、約2年で500億円超を調達したと提示しました。次の一手はWeb3を活用した新金融商品(セキュリティトークン化・ステーブルコイン活用)だとしています。
さらにメタプラネット証券がSiiibo証券を21億円で買収(7月13日)し、私募債事業を展開します。登壇は小村和輝CEO、奥野晋平執行役、モデレーターはProgmatの齊藤達哉氏。プラチナスポンサーとして参加しました。(NADA NEWS)。
決済とAIエージェント経済|「AIがお金を使う日」
◼️堀江貴文 × JPYC岡部典孝【会場】track: AI×crypto
パネル「AIがお金を使う日 — エージェント経済で激動する未来を読む」(モデレーターは「あたらしい経済」設楽悠介編集長)。堀江氏は1万円札の廃止を提案し、現金大国である日本でこそステーブルコインの普及余地が大きいと主張しました。岡部氏は「対応が遅れると、ドル建てステーブルコインの利用が進み、日本円の存在感が低下するリスクがある」と警鐘を鳴らしました(NADA NEWS、CoinPost)。
◼️Circle × JPモルガン × ソラナ【会場・海外】
次世代決済パネル(モデレーターはCoinDeskのオムカル・ゴドボレ氏)。Circleのヤム・キ・チャン氏は2026年Q1のUSDCオンチェーン取引量が約26兆ドル・130カ国超に及ぶと述べ、JPモルガンKinexisのオリバー・ハリス氏は創設5年で4兆ドルを移転し日次80億ドルを処理していると紹介。ソラナ財団のルー・イン氏は「AIエージェント決済が次のフロンティアだ」と語りました(CoinPost)。
◼️テスタ × 渡辺創太【会場】
投資家のテスタ氏は、信用不安ヘッジとしてBTCを1億円分購入したと明かし、トークン化株式では「コスト削減の恩恵を最初に受ける証券会社」への投資に注目していると語りました。渡辺創太氏は「Hyperliquidは13人のチームで、NASDAQの1/10の取引ボリュームを処理している」と、システムコスト削減の効果を例示しました(NADA NEWS、CoinPost)。
規制・政策|制度が背中を押す
◼️高市早苗首相【会場】
初日にビデオメッセージで祝辞を寄せました。WebXを「約1.5万人が集うアジア最大級」と評価し、「スタートアップ総力パッケージ」(2027年度までにスタートアップ投資を年10兆円規模へ引き上げる方針)を紹介しました(CoinPost)。
◼️暗号資産ETF・金商法改正【会場】
パネル「日本暗号資産市場は金商法でどう変わる?」。木原誠二議員は、暗号資産の金商法移行(=投資商品化)を進め、ETFは機関投資家を呼び込むために必須で、レバレッジ2倍規制は厳しすぎると主張しました。
河合健弁護士は情報開示・インサイダー規制の整備を、保木健次氏は責任準備金100%では国内ビジネスが困難と指摘。申告分離課税20%への引き下げが論点で、国内口座約1,400万に対し暗号資産の納税者は約5万人にとどまるという現状も示されました(CoinPost)。
◼️神田潤一議員 DeFi法制化【会場】
パネル「オンチェーン金融の現在地」で、神田潤一議員は「このあと2〜3年でDeFiをきちんと法制化する」と語りました。暗号資産の金商法移行(6月に衆院通過・参院で審議中)の、その次を見据える発言です。共演は平将明前デジタル相、齋藤正勝氏(トレードワークス)、蓮尾聡氏(コインチェック会長)、モデレーターは久田哲史氏(Datachain CEO)(NADA NEWS)。
◼️政府の顔ぶれ【会場】
高市首相のほか、片山さつき財務・金融相、松本尚デジタル相、赤澤経産相、萩生田光一衆院議員らが登壇・関与しました。経済産業省・JETROがイベントを後援しており、政府とweb3業界の距離が一段と近づいたことがうかがえます(各登壇の詳細は各紙を参照)。
考察|日本が主役の「実装フェーズ」へ
今回のWebXを通して見えるのは、日本のクリプトが「これから何をするか」を語る段階から、「もう何を動かしているか」を示す段階へ移ったということです。
テーマがステーブルコイン・RWAトークン化・機関マネー・AIエージェント決済という”お金が動く領域”に集中し、発表主体がSBI・メガバンク・上場企業と、いずれも実弾を持つプレイヤーだった点に、そのフェーズ移行がよく表れています。
読み解きのポイントは4つあります。1つ目は、日本のオンチェーン金融の本命がSBI・メガバンク(Progmat)の複数極に立ち上がってきたこと。2つ目は、基盤争いがSolana/Soneium/Progmat(一部イーサリアム)という土台をめぐる競争になってきたこと。SBIはソラナに賭けてJPYSCやRWAを載せ、StartaleはSoneium上でOFKとVisaカードにより機関と個人をつなぎ、メガバンクや上場企業はProgmatを共通基盤に据える、今後を追うなら、個別ニュースよりも「誰がどの基盤に乗ったか」を軸に整理すると流れがつかめます。
3つ目は、テーマがステーブルコイン → RWA・国債トークン化 → AIエージェント決済へと段階的に広がっていること。円ステーブルコインはレンディングや店頭実証まで来て、国債やファンドのトークン化は兆円規模の市場を見据え、その先にAIがお金を使う世界が語られました。そして4つ目が、高市政権の投資10兆円方針・金商法改正・DeFi法制化の議論という制度的な追い風です。大手プレイヤー・具体的なプロダクト・政府の後押しが、初めて同じタイミングで同じ方向を向いた、それが今年のWebXでした。
Circle・JPモルガン・BlackRock・フランクリン・テンプルトン・トム・リーといった海外勢も存在感を見せましたが、要は、今年の主役は日本だった、という総括になります。制度の細部(とくに税制)はまだ流動的なので、そこは冷静に見つつ、日本発のオンチェーン金融がどこまで実装まで届くのか、これからの半年を追っていきたいところです。
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