おはようございます。
今日は「webmcp.cool(WebMCP)」をリサーチしました。
概要|webmcp.coolとは?
変遷|WebMCPはどこから来てどこへ向かうのか
考察|カタログを握る者がエージェント時代の入口を握る
TL;DR
webmcp.cool は「WebMCP仕様の本体」ではなく、agentic commerce(エージェント主導の商取引)企業 nekuda が運営する、WebMCP対応サイトのライブ・ディレクトリ(一覧サイト)です。各サイトが公開する「呼べる関数(ツール)」と入力スキーマをブラウズでき、エージェント読み取り用のJSON APIも備えています。
主役は webmcp.cool より、その背後の WebMCPという潮流です。従来のDOMスクレイピング(画面要素を読み取って推測でクリックする方式)をやめ、サイト側が宣言した関数をエージェントが直接呼べるようにする——その入口・カタログが webmcp.cool です。
WebMCPは2026年6月11日付で W3C Web Machine Learning Community Group の Draft Community Group Report(草案) になりました。ただし「W3C標準」ではなく提案段階で、MicrosoftとGoogleがエディタに名を連ねるブラウザ側の主導権争いが本丸です。
概要|webmcp.coolとは?
webmcp.cool は、WebMCPに対応したウェブサイトを集めたライブ・ディレクトリ(一覧サイト)です。
運営はニューヨーク・ブルックリン拠点のエージェンティック企業 nekuda(nekuda.ai)で、フッターには “This is an open directory of websites that expose interfaces to agents via WebMCP. … Maintained by nekuda.ai.”(WebMCP経由でエージェントにインターフェースを公開しているサイトのオープンなディレクトリ。nekuda.ai が運営)と明記されています。
取り上げる理由は、nekuda が2026年6月2日にこのディレクトリと関連ツールを告知した直後、6月11日に WebMCP が W3C Community Group の草案(Draft Community Group Report) に進んだからです。
「エージェントがウェブをどう操作するか」の標準が固まりつつあるタイミングで、webmcp.cool はその潮流の「入口・カタログ」として位置取りを始めました。仕様本体でもブラウザでもSDKでもなく、「どのサイトが対応し、何を公開しているか」を見つけるレジストリ(登録簿)だと押さえてください。
◼️解決する課題
課題は2層あります。
WebMCPが解く課題は、従来のDOMスクレイピング(画面要素を読み取り推測でクリックする方式。構造が変わると壊れ、遅く、誤動作しやすい)への依存です。webmcp.cool が解く課題は、「そもそもどのサイトがWebMCPに対応しているか分からない」という発見性(discoverability)の問題で、一覧化する入口がないと対応してもエージェントに見つけてもらえません。
webmcp.cool の About にはWebMCPは、ウェブサイトが型付きで呼び出し可能な関数群を、ブラウザ内でAIエージェントに直接公開できるようにするとあります。「サイトが関数を出す(WebMCP)」と「出しているサイトを見つける(webmcp.cool)」の両輪がそろって、初めて安定して操作できます。
◼️仕組み・プロダクトの柱
webmcp.cool の中核は、次の3つです。
1. 対応サイトのライブ一覧: WebMCPに対応したサイトをカタログとして掲載します。pizza-maker / webmcp-flow / react-chess といったデモサイトも並び、実例で見られます。
2. ツール・入力スキーマのインスペクション: 各サイトが公開するツール(型付きで呼び出し可能な関数)と入力スキーマ(渡すべき引数)をブラウズできます。開発者が「このサイトに何が呼べるか」を事前に把握できるのが効きどころです。
3. エージェント読み取り用のJSON API: /api/openapi.json や /api-docs などのJSONエンドポイントを提供し、エージェントがプログラムから読めます。ディレクトリ自体が「機械可読なレジストリ」になっているわけです。
変遷|WebMCPはどこから来てどこへ向かうのか
webmcp.cool 単体の歴史は浅いので、ここではWebMCPという潮流の変遷と運営主体 nekuda の素性を見ていきます。
◼️登場の経緯(MCPからWebMCPへ)
出発点は MCP(Model Context Protocol/モデルコンテキストプロトコル) です。Anthropic が2024年11月25日にOSS公開し(仕様 2024-11-05)、「AIのUSB-C」と呼ばれました。組み合わせの数だけ個別実装が要る「M×N統合問題」を共通プロトコルで解く狙いで、基本はサーバーサイドの仕組みです。
WebMCP はその派生で、違いは「ツールをどこに置くか」です。MCPがサーバー側に置くのに対し、WebMCPは ウェブページ側(ブラウザの中)に置きます。これは置き換えではなく補完で、同じサイトがブラウザ側はWebMCP・バックエンドはMCPと使い分けられます。フロントエンドのJavaScriptに限定され、ユーザー在席が前提で、ブラウザの origin(オリジン)や認証のセキュリティをそのまま活かせるのが利点です。
◼️運営主体 nekuda
webmcp.cool を運営する nekuda は、agentic commerce / agentic payments(エージェント主導の商取引・決済)のインフラを手がけるスタートアップ(ニューヨーク・ブルックリン)です。”Your website answers back”(あなたのウェブサイトが応答する)を売り文句に、Agent Wallet(決済クレデンシャルのエージェント委譲)、Agentic Mandates(購入意図への承認制御)、Universal Checkout / WebMCP連携などを展開しています。
象徴的なのが創業ストーリーで、nekuda.ai には “We started nekuda by trying to build agents that could order pizza for us. It failed miserably...”(ピザを注文してくれるエージェントを作ろうとして始めたが、見事に失敗した)とあります。CEO 兼共同創業者は Ayal Karmi 氏で、イスラエル中央銀行(統計・クロスボーダー決済)→ 農業画像のコンピュータビジョン(CV)スタートアップ共同創業 → 暗号資産取引監視の Solidus Labs を経て nekuda を創業した経歴です。。
◼️資金調達
nekuda は $5M(シード相当) を調達しています(2025年5月14日発表、BusinessWire)。リードは ★Madrona Ventures、これに Amex Ventures(American Express系)と Visa Ventures(Visa系)という決済大手のCVCが参加しているのが特徴的です。決済大手2社が同時に入っている点に、「エージェントがウェブで買い物をする世界」への賭けがにじみます。
◼️WebMCP標準化の流れ
そして、2026年6月11日付の “Draft Community Group Report, 11 June 2026”(Web Machine Learning Community Group)が公開されました。これは 「W3C標準」ではなく、Community Group が出した草案(提案)段階です。エディタは Brandon Walderman 氏(Microsoft)/ Khushal Sagar 氏(Google)/ Dominic Farolino 氏(Google) の3名で、MicrosoftとGoogleがブラウザ側から主導しています。
仕様の中身では、APIは document.modelContext(Document上の読み取り専用属性)として定義され、セキュリティ面は SecureContext必須・same-origin(同一オリジン)検証・permissions policy(既定 'self')・prompt injection(プロンプトインジェクション)の緩和が明記されています。ツール説明への命令埋め込みや返り値への命令注入に仕様レベルで対処しようとしている点は注目です。
◼️競合プレイヤー
WebMCP圏のプレイヤーを、webmcp.cool との役割の違いで整理します(1行ずつ)。
WebMCP仕様本体(W3C webmachinelearning/webmcp): 標準そのもの。webmcp.cool は競合ではなく、標準の上に乗る「対応サイト一覧」の側です。
MCP-B(WebMCP-org、作者 Alex Nahas 氏/元Amazon): WebMCPのランタイム層(polyfill+拡張ランタイム+Reactフック+MCPクライアントブリッジ)。「一覧」の webmcp.cool に対し MCP-B は「実装・SDK」で、直接競合ではない同圏内の有力プロジェクトです。
OpenAI Apps SDK(2025-10-06 プレビュー公開、11-13にBusiness/Enterprise/Edu向け拡大): MCPベースで ChatGPT 内にアプリを作る仕組み。「ChatGPTの中」に閉じており、任意サイトを対象とするWebMCPとは土俵が違います。
Chrome組み込み / Gemini in Chrome: ブラウザ内蔵アシスタントがWebMCPツールを直接呼ぶ「消費側」。GoogleはエディタでもありWebMCP標準の主要ドライバーで、供給側カタログの webmcp.cool とは向きが逆です。
考察|カタログを握る者がエージェント時代の入口を握る
結論から言うと、webmcp.cool の本当の狙いは「便利な一覧サイト」ではなく、WebMCPが普及する世界で「対応サイトの入口(レジストリ)」と「決済レイヤー」の両方を押さえることにあります。
◼️強み
タイミング: WebMCPが草案に進む直前にディレクトリと拡張を出し、標準が固まる前に「入口(レジストリ)」の座を取りに行きました。
本業との接続: 「対応サイトを集める→エージェントが買い物する→自社の決済レイヤーが効く」という導線が一本につながり、ディレクトリ単体は赤字でも本業で回収できます。
決済大手の後ろ盾: シードに Amex Ventures と Visa Ventures が同時に入っているのは、「エージェント決済」への強いシグナルです。
◼️弱み・リスク
「W3C標準」ではない: まだ草案段階で標準として固まる保証はなく、仕様が変われば
document.modelContextの挙動も変わり得ます(polyfill はnavigator.modelContextで表記揺れあり)。揺れる土台に乗るカタログには、土台ごと変わるリスクがあります。レジストリの座は競争になる: 「対応サイトの一覧」は技術的な堀(参入障壁)が薄く、GoogleやMicrosoftがブラウザ側に発見機構を内蔵すれば、独立した一覧サイトの存在意義は薄れます。
ポジショントークと実態の距離: nekuda の主張は自社が得をする方向でもあります。対応サイト数(現状は数十〜百サイト規模)はまだ初期段階で、エコシステムが立ち上がるかは未知数です。
◼️個人的な見解
個人的には、webmcp.cool は「一覧サイト」として読むと過小評価で、「WebMCP時代のレジストリ+決済の入口を取りにいく戦略的ポジショニング」として読むと面白くなる対象です。ただ本丸は WebMCPという標準そのもので、主導権はブラウザを持つ Microsoft と Google にあります。
webmcp.cool が「便利な一覧」止まりか「エージェント時代の入口」になれるかがはっきりします。ここがポイントです。
参考リンク
公式サイト(ディレクトリ): webmcp.cool
運営: nekuda.ai
GitHub: nekuda-ai/webmcp
nekuda Substack: Google doubles down on WebMCP
Anthropic: Model Context Protocol
The Decoder: Google’s WebMCP moves the web closer to becoming a structured database for AI agents
BusinessWire: Nekuda Raises $5M Led by Madrona
MCP-B Docs: What is WebMCP
免責事項:リサーチした情報を精査して書いていますが、個人運営&ソースが英語部分も多いので、意訳したり、一部誤った情報がある場合があります。ご了承ください。また、記事中に Dapps、NFT、トークン、AIサービス等を紹介することがありますが、勧誘では一切ありません。全て自己責任でご判断・ご利用ください。
About us:DEBUNK(Crypto&AI)は “For learning, not for hype.” をコンセプトに、Crypto・AI 領域の注目トレンド・プロジェクト解説・最新ニュースをまとめた Agentic Web Research を毎日配信しています。
Author:mitsui (@mitsuiio) — DEBUNK(Crypto&AI)founder。Crypto・AI 領域のリサーチャーとして活動。
Contact:法人向けのリサーチコンテンツの納品や共同制作、リサーチ力を武器にした Crypto・AI コンサルティング・勉強会なども受付中です。詳しくは以下の窓口よりお気軽にお問い合わせください。
🐦 X: @debunkrsch
🌐 HP: debunkresearch.com
「AI版」のリサーチも始動しました。「Agentic Web」時代を見据えたニュースレターとなり、CryptoとAIの2つのニュースレターが走り始めます。どちらか1つだけの購読で良い方はご自身のアカウント設定から管理できます。
クリプト版はこれまで通り続きながら、AI版も同じようなフォーマットでリサーチして更新していきますのでお楽しみに!






