【Uniswap v4 Permissioned Pools】2026年7月23日に発表した v4 の新しいプール規格
Uniswapが2026年7月23日に発表した v4 の新しいプール規格
おはようございます。 今日は「Uniswap v4 の Permissioned Pools」をリサーチしました。
概要|Permissioned Poolsとは何か?
変遷|許可制DeFiは、一度きれいに死んでいる
考察|「発表」と「稼働」を、自分で切り分けて読む
TL;DR
Permissioned Pools は、Uniswapが2026年7月23日に発表した v4 の新しいプール規格です(公式発表)。v4 の hook(フック/プールの各処理に割り込んで独自ロジックを差し込む拡張点) を使い、発行体(issuer)が管理する allowlist(許可リスト)を、スワップのたびにプロトコル層で検証します。
ただし、「ローンチした」とは書けません。実装は Ethereum mainnet にデプロイ済みですが、発表4日後の2026年7月27日時点で、中核3コントラクトのイベントログはいずれも0件(Blockscout API で実測)。プールを生む Factory のログが0件=プールがまだ1つも作られていない。今の段階は「実装公開+パートナー予告」です。
そして、許可制DeFiは一度きれいに死んでいます。Aave Arc はピークTVL $7,840,919(2022年11月11日)から $57,264 まで約99.3%減(DefiLlama API、2026年7月27日時点)。今回の違いは技術ではなく、規制環境と、既存の最大の流動性インフラに”規格”として乗せたこと。見るべきは市場予測の桁ではなく、Factory のログが増えるかどうかの一点だと思っています。
概要|Permissioned Poolsとは何か?
まず、いちばん誤解されやすいところから。今回の発表は「Uniswapが許可制になった」という話ではありません。既存のパーミッションレスなプールは何も変わっていません。v4 の hook という拡張点を使って、許可制の”別レーン”を敷けるようにした、というのが正確な理解です。
その別レーンで何が起きるかというと、発行体が管理する allowlist の確認が、スワップのたびにコントラクト側で走るようになります。これまでの「規制対応」はフロントエンドで地域やアドレスをブロックする形が主流でしたが、UIを迂回すればコントラクトは誰でも叩けます。
Permissioned Pools はその検証をプロトコル層に持ち込んでいて、Uniswapはこれを “the first generalized, open source, institutional-grade standard”(規制資産をAMM上で取引するための、初の汎用的でオープンソースな機関投資家グレードの標準)と自称しています。
◼️解決する課題
規制対象の資産(トークン化株式、ファンド持分、私募債など)をオンチェーンで扱おうとすると、だいたい次の3つで詰まります。
適格性チェックとAMMが噛み合わない: 誰でも参加できる前提で作られた自動マーケットメイカー(AMM)に、「認定投資家だけ」といった条件を後付けするのが難しい
UI遮断は迂回できる: フロントエンドでブロックしても、コントラクトを直接叩かれれば止められない。発行体からすると、コンプライアンス上そこに責任を持てない
止める手段がない: 制裁対象の判明やインシデント時に、発行体が取引を止めたり保有者を入れ替えたりする手段が、既存のAMMにはない
Permissioned Pools は、この3つをまとめて「発行体が握るスイッチ」として実装したもの、と読むのが早いです。あとで触れますが、その”握り”の強さこそが最大の論点でもあります。
◼️仕組み(4つの部品と、フックポイント)
公式ドキュメントによれば、構成は4つの部品です。
Permissions Adapter: 原資産(許可制トークン)を預かり、プール内で取引されるラップトークンをミントするERC-20ラッパー。docsは「アダプタとラップトークンは同一のコントラクトである」と明記しています
Permissioned Hook: allowlist を検証する hook 本体
Permissioned Position Manager: 標準のPosition Managerに、allowlist 検証と自動ラップを足したもの
Universal Router: Permissions Adapter を経由するラップ処理を担当
hook が割り込むのは4か所です。beforeInitialize で「少なくとも片側の通貨がFactory検証済みのアダプタであること」を確認し、beforeSwap で SWAP_ALLOWED フラグと発行体のpause状態を見て、afterSwap でインデックス用のイベントを出し、beforeAddLiquidity で LIQUIDITY_ALLOWED フラグを見ます。権限フラグは SWAP_ALLOWED = 0x0001 と LIQUIDITY_ALLOWED = 0x0002 の2種類で、片方だけ持たせられます。「取引はできるがLPにはなれない」参加者を想定した設計です。
◼️パーミッションレスなプールとの関係
技術的な”うまさ”は、v4 の flash accounting に乗っている点にあります。v3ではプールごとにコントラクトが分かれていたため、マルチホップ(複数プールを経由する取引)のたびに各段でトークンが動いていました。
v4は単一の PoolManager(singleton)と transient storage(EIP-1153)で差分を内部管理し、最終的な入出力の2回だけ実トークンを移す方式です。Permissioned Pools はこれを使って、許可制の資産は許可制のコントラクトに置いたまま、交換の計算だけを外で回す形を取っています(公式ブログの説明)。規制資産が無許可のアドレスに一瞬でも渡る状態を作らずに済むわけです。
とはいえ、この別レーンは本線とルートを共有できません。allowlist を通っていないアドレスはルートに入れないので、許可制プールを経由するマルチホップは組めない。専用の PermissionedV4Router を使う設計になっているのもそのためです。デプロイ先も現時点で Ethereum mainnet と Sepolia のみで、他チェーンのアドレスはありません。
変遷|許可制DeFiは定着するのか
◼️なぜ今なのか(背景)
なぜ今なのか。規制側の時計が動いたからです。SECは2026年5月18日ごろ、Atkins体制の “Project Crypto” のもとでトークン化株式の枠組みを準備していると報じられ、DTCCは7月に限定的な本番取引、10月に本格展開の予定とされています。ただし同じSECは、2026年5月26日に “innovation exemption” を延期しました(Unchained)。Nasdaq・NYSE・Cboe が非公開会合で反発し、NMS規則を迂回する並行市場になる点、株主権や配当処理が未解決である点が論点になったと報じられています。新しい時期は未定です。
欧州も明るくはありません。EUのDLT Pilot Regime は認可がわずか3件(CSD Prague / 21X AG / 360X AG)、稼働は2件のみで、ESMAは2025年6月に「閾値を柔軟化して恒久化すべき」と勧告しています。つまり「規制が整ったから今」ではなく、整いかけて何度も止まっているところに、インフラ側が先回りしたというのが実際のところに見えます。






