【Palmier Pro】AIエージェントが操作するビデオエディター / @Palmier_io
コード解析AIから大胆ピボット。元五輪候補スイマー × YouTuber × エンジニアのYC創業者が、Claudeがタイムラインを直接操作するOSSビデオエディターを作った。
おはようございます。
今日は「Palmier Pro」をリサーチしました。
概要|Palmier Proとは?
変遷|コードAI→ビデオエディターへの大胆なピボット
考察|「AIエージェントが操作するソフトウェア」の最前線
TL;DR
Palmier Proは、AI動画生成と編集を1つのタイムラインで完結させるmacOSネイティブのビデオエディターです。最大の特徴はMCPサーバー内蔵で、Claude CodeなどのAIエージェントがタイムラインを直接操作できることです。
AI動画生成ツール(Runway、Pika、Kling等)は「クリップを生成する」止まりで、生成→ダウンロード→別エディターに取り込み→気に入らなければ再生成、というループが常態化しています。Palmier Proは生成と編集を同一タイムラインに統合し、さらに「人間が操作する」だけでなく「AIエージェントが操作する」前提で設計された初めてのビデオエディターです。
創業者のMarcos Rico Pengは元スペイン代表の競泳選手かつYouTuber(登録者15.5万人超)という異色の経歴。最初はコードベース解析AIとして創業しましたが、自身のクリエイター経験からビデオエディターへ大胆にピボット。
概要|Palmier Proとは?
Palmier Pro は、AI動画生成と動画編集を1つのタイムライン上で完結させるmacOSネイティブのビデオエディターです。
運営は Y Combinator S24 出身の Palmier, Inc.(サンフランシスコ)。Swift製・GPLv3ライセンスのオープンソースで、2026年6月18日にローンチ。ローンチ翌日にはGitHub Trending全言語1位を獲得し、現時点で約4,900スター / 375フォークです。
掲げるのは “The video editor built for AI”(AIのために作られたビデオエディター)。この「AIのために」には二重の意味があります。ひとつは「AI動画生成をタイムライン内で直接行える」こと。もうひとつは「AIエージェント自身がエディターを操作できる」こと。後者がPalmier Proの本当の差別化軸です。
◼️解決する課題
AI動画制作の現場で最大のペインは、ツール間の往復です。
Runway や Kling で動画クリップを生成 → ダウンロード → Premiere Pro に取り込み → 気に入らない箇所を再生成 → 再ダウンロード → 再インポート……このループを1本の動画で何十回も繰り返す
生成時のプロンプトや使用モデルの情報が散逸し、「このクリップどうやって作ったっけ?」が頻発する
AI動画制作の所要時間の大半が、この「ツール行き来」と「メタデータ管理」に費やされている
創業者の Marcos Rico Peng はこう語っています。
「AI動画を作るということは、ツール間を常に飛び回るということだった。ウェブでクリップを生成して、Premiereに取り込んで、一部がダメだと分かったらまた戻って、再生成して、再インポートして」 ——Marcos Rico Peng
Palmier Pro は「生成も編集も書き出しも、全部タイムラインの中で完結させる」ことで、このループを根本から断ち切りにきています。
◼️プロダクトの3つの柱
1. タイムライン統合型AI生成
タイムライン上で直接、AI動画・画像・音声を生成できます。対応モデルは Kling V3 / Seedance 2.0(ByteDance) / Veo 3.1(Google) / Grok Imagine(xAI) など。生成されたクリップには、プロンプト・使用モデル・参照画像といったメタデータがタイムライン内に保持されるため、「このクリップをどう作ったか」が常に追跡可能です。
2. MCP統合──AIエージェントがエディターを操作する
ここが核心です。MCPサーバーを内蔵しており、Claude Code、Claude Desktop、Cursor などのAIエージェントが、タイムラインのクリップを直接操作できます。トリミング、並び替え、生成、再生成──すべてエージェントが実行可能。
従来の「AIアシスタント」は、チャットウィンドウで提案をするだけで、実際のソフトウェア操作は人間がやる必要がありました。Palmier Pro はエージェントがエディターそのものを操る設計を最初から組み込んでいます。
3. オープンソース + フリーミアム
エディター本体とMCPサーバーはGPLv3でオープンソース。AI生成パイプラインのみクローズドソースです。エディター自体は無料・アカウント不要で、AI生成機能を使う場合にクレジットを消費する仕組み(Pro $29/月でクレジット5,000、Max $69/月で12,000。いずれもローンチ価格)。書き出しは MP4(H.264 / H.265 / ProRes)と NLE XML(Premiere Pro / DaVinci Resolve 互換)に対応しており、「Palmier でラフカット → 既存ソフトで仕上げ」のワークフローにも乗ります。
◼️MCPという「タイミング」
MCPは、Anthropic が提唱した「AIエージェントが外部ツールと標準的に接続するためのプロトコル」です。2025年後半から2026年にかけてエコシステムが急拡大しており、Claude Code をはじめ多くのAI開発環境がMCPをサポートし始めています。
Palmier Pro がこのタイミングでMCP対応を前面に出してローンチしたのは偶然ではありません。「AIエージェントがソフトウェアを操作する」という大きなトレンドの中で、ビデオエディター領域のファーストムーバーとして名乗りを上げた格好です。
変遷|コードAI→ビデオエディターへの大胆なピボット
◼️最初はコードAIだった
Palmier は、最初からビデオエディターではありませんでした。2024年に Y Combinator S24 バッチに採択されたときのプロダクトは 「Palmier: AI that understands any codebase」──AI駆動のコードレビュー・PR自動解析・コードベースチャットツールでした。
Product Hunt でもこのコードAI版としてローンチし、123アップボートを獲得しています。しかしその後、創業者の Marcos 自身がYouTubeクリエイターとしてAI動画制作の非効率を痛感し、ビデオエディターへピボット。YCポートフォリオ企業15社以上にシネマティックなローンチ動画を制作する中でプロダクトを磨き、2026年6月18日に Palmier Pro として正式ローンチしました。
◼️創業者プロフィール
Marcos Rico Peng(CEO・共同創業者): UC Berkeley EECS(電気工学・コンピュータサイエンス)を3年で卒業(2022年)。LinkedInでインフラエンジニアとして約1年半勤務。もうひとつの顔は元競泳スペイン代表。スペイン記録保持者(4×50mメドレーリレー)、ジュニアナショナルチャンピオン(50m・100m自由形、2018-2019年)で、パリ2024五輪のスペイン代表を目指してトレーニングしていました。さらにYouTuberとしても活動しており、「エンジニアしながら五輪を目指す日常」を配信するチャンネルは登録者15.5万人超、累計1,200万回以上再生。この「クリエイターとして動画を作る」実体験が、ビデオエディターへのピボットを導いた可能性が高いです。
Harrison Tin(CTO・共同創業者): UC Berkeley EECS卒。元Microsoft ソフトウェアエンジニア。
チームは2名(2026年6月時点)。サンフランシスコ拠点で、現在採用活動中です。
◼️タイムライン
2024年: Marcos Rico PengとHarrison TinがSFで創業
2024年夏: Y Combinator S24バッチに採択。$500Kのシード出資
2024年9月頃: コードベース解析AI「Palmier」としてローンチ
2026年中期: ビデオエディターへピボット。YCポートフォリオ企業15社以上に動画制作
2026年6月17日: GitHub Trending Swift言語1位
2026年6月18日: Palmier Pro 正式ローンチ
2026年6月19日: GitHub Trending 全言語1位を達成
◼️資金調達
$500K(シード) — Y Combinator S24 出資(2024年9月頃)
追加ラウンドは2026年6月時点で確認されていません。$500K・2人チームでGitHub Trending全言語1位を取るに至ったのは、リソース効率の高さが際立ちます。
◼️業界全体の変遷
AI動画生成ツールは2024年以降、爆発的に増えました。Runway Gen-3、Sora、Kling、Pika、Veo──しかしこれらはすべて「クリップを生成するツール」であり、編集は別のソフトでやる前提です。同時に、AIエージェントが外部ツールを操作する概念も2025年後半から急速に広がり、MCP対応ツールが続々と登場しています。
この2つの流れ──「AI動画生成の乱立」と「AIエージェントによるソフトウェア操作」──が交差する地点にPalmier Proは座っています。
◼️競合プレイヤー
CapCut / Premiere Pro(従来型エディター): 機能は成熟しているが、AI生成機能は後付け。MCPサーバーがないためAIエージェントによる操作は不可
Runway / Pika / Kling(AI生成専用): クリップ生成に特化。編集機能がなく、生成→ダウンロード→別エディターへの取り込みが必要
Descript: トランスクリプト(文字起こし)ベースの編集が強み。AI生成統合やエージェントアクセスは限定的
Palmier Pro: 規模では圧倒的に小さい。差別化は「生成+編集の統合」と「MCP対応(エージェント操作可能)」と「オープンソース」の3点セット。ビデオエディター領域で「エージェントが操作する」カテゴリを最初に定義した
考察|「AIエージェントが操作するソフトウェア」の最前線
結論から言うと、Palmier Pro の真価は「便利なAI動画編集ツール」というよりも、「AIエージェントがソフトウェアを直接操作する」という設計思想を、ビデオエディターで最初に形にしたことにあります。
◼️強み
「生成+編集」の統合が解くペインの大きさ: AI動画制作者が最も時間を浪費しているのが「ツール行き来」です。ここを1つのタイムラインで解決するのは、使う人に即座に効く実用的な価値です。
MCP対応のファーストムーバー: ビデオエディター領域でMCPサーバーを内蔵し、AIエージェントがタイムラインを操作できるプロダクトは他にありません。「Premiereの使い方をAIに教える」のではなく、エディター側がエージェント向けのAPIを用意するという設計の勝ちです。
オープンソース+フリーミアムの賢さ: エディターを無料・OSSにして間口を広げ、生成クレジットだけ課金する。開発者コミュニティの貢献も呼び込みやすく、ローンチ4日で375フォークという初速がそれを裏付けています。
◼️弱み・リスク
macOS専用という狭い間口: Apple Silicon・最新macOS(Tahoe)以降が必須で、Windows / Linux / 旧Mac は対象外。AI動画制作者にはWindows率が高い層もおり、普及の天井になりかねません。
2人チームの開発速度: Premiere Pro や CapCut は数百人規模のチームで開発されています。2人で機能追加とバグ修正を回し続けるのは構造的に厳しく、OSSコミュニティの成長速度が生命線です。
ローンチ直後で定着は未知数: GitHub Trending 1位は話題性の証明であって、プロダクトの定着を意味しません。「ラフカットはPalmierで」が実際のワークフローに組み込まれるかは、これからの数か月で決まります。
◼️個人的な見解
個人的にPalmier Proが面白いのは、「AIが動画を作る」ではなく「AIエージェントが動画エディターを操る」という発想の転換です。これは動画編集に限った話ではなく、あらゆるクリエイティブツールに波及する設計思想です。
スライド作成、デザイン、音楽制作など「エージェントが操作する前提で設計されたソフトウェア」は、今後どんどん出てくるでしょう。Palmier Pro はそのカテゴリの最初の成功例になりうる位置にいます。
そして Marcos Rico Peng の経歴が絶妙です。競泳でスペイン代表を目指し、YouTuberとして15万人のチャンネルを運営し、UC Berkeley でCSを3年で卒業、この「自分がクリエイターとして動画を作る」実体験があったからこそ、「ツール行き来」のペインを肌で知り、解決策を形にできたと感じます。YCでコードAIとして始めた後に、自分の「もうひとつの専門性」であるクリエイター領域へピボットした判断は、後から見れば必然に見えます。
Palmier Pro が「便利なニッチツール」で終わるのか、「エージェント時代のクリエイティブインフラ」になるのか、今後が楽しみです。
参考リンク
公式サイト: palmier.io
GitHub: palmier-io/palmier-pro(約4,900 stars)
Y Combinator: Palmier Pro — an open-source video editor your agents can operate
eesel AI: What is Palmier AI Video Editor?
Marcos Rico Peng: YouTube(登録者155K+)/ X @Marcos12345rico
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