おはようございます。
先週1週間(6/20〜26)のAI市場の振り返りです。
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OpenAI×Broadcom、初の自社推論チップ「Jalapeño」を発表 — NVIDIA一極からの脱却が本格化
6/24発表。OpenAIがLLM推論に特化した自社設計チップ「Jalapeño」を、Broadcom(製造・Tomahawkネットワーキング)、Celestica(システム統合)と共同で公開しました。OpenAIにとって初の自社設計シリコンです。
スピード感が際立ちます。設計からテープアウト(量産前の設計確定)までわずか9カ月で、2026年後半にギガワット規模での展開を計画。初期生産の約4割をMicrosoftが購入する見込みと報じられています。
設計思想は「汎用GPUではなく推論専用」。NVIDIAのGPUは学習・推論を幅広くこなす汎用品ですが、Jalapeñoは推論というワンタスクに絞ることで電力効率を稼ぐ狙いです。電力性能は「大幅改善」とされますが、これはOpenAIの自己申告値なので、第三者ベンチが出るまでは割り引いて見ておくのが無難です。
ここがポイントで、Amazonの自社チップ外販やAnthropic×Micronのメモリ協業(後述)と合わせると、AI競争の主戦場が「モデルの賢さ」から「チップ・メモリ・電力をどう自前で押さえるか」へ一段下りてきたのが今週の構図です。NVIDIA一極への依存を各社が同時に外しにかかっています。
Snowflake CEO「GLM-5.2はOpus 4.7と互角で激安」 — 中国オープンウェイトが”価格”で西側を脅かす
6/25。SnowflakeのCEOが、自社の実務ベンチマークで中国製GLM-5.2とAnthropic Opus 4.7がほぼ互角だったと明かしました。スコアは66%対67%と、ほとんど差がありません。
衝撃なのは価格です。GLM-5.2は出力100万トークンあたり$4.40と、Opus級の性能を桁違いに安いコストで提供しています。性能で並ばれた上に価格で大きく下を取られる、という西側ラボにとって最も嫌な展開です。
前週から続く「中国オープンウェイトモデルの台頭」というナラティブが、今週は”価格軸”で具体化しました。性能が同じなら、企業が安いほうを選ぶのは自然な流れです。
要は、西側ラボの高い評価額(バリュエーション)に対して、現実的な価格圧力がかかり始めたということです。モデルの賢さで差別化しづらくなったとき、コスト構造そのものが競争力になります。
Google→Anthropicの頭脳流出が止まらない — Gemini研究者 Adler/Pritzel が移籍
6/25報道。Gemini開発に関わったJonas AdlerとAlexander Pritzelが、GoogleからAnthropicへ移籍しました。前週のノーベル賞受賞者ジョン・ジャンパー(DeepMind→Anthropic)、Noam Shazeer(→OpenAI)に続く連鎖です。
構図としては、IPO(新規株式公開)を控えたラボが、上場前の株式報酬を武器に大手から人材を引き抜いている形です。上場すれば紙くずになるかもしれない株式が、上場前だからこそ大きな魅力になります。
Googleにとっては、Gemini開発の中核を担ってきた研究者が立て続けに抜けるダメージは小さくありません。「人材がいるところにAIの未来がある」とすれば、流れはGoogleにとって厳しい方向です。
数週にわたって続く人材移籍の話題は、今週の「企業動向」のコアでもあります。モデル開発は結局のところ人で決まる、というのを改めて突きつけられた格好です。
Google、Gemini 3.5 Flashに「コンピュータ操作」を標準搭載 — PC操作AIが標準モデルの一機能に
6/25。Googleが、これまで別建てだった「コンピュータ操作(computer use)」機能を、主力モデルGemini 3.5 Flashに統合しました。AIが画面を「見て・考え・操作する」エージェントを、標準モデルだけで構築できるようになります。
対応範囲はブラウザ・モバイル・デスクトップと広く、PC操作エージェントのベンチマークOSWorldでトップ級のスコアを記録しています。専用モデルを別途呼ばなくても、標準Flashでここまで動く、というのがインパクトです。
セキュリティ面も手当てされています。プロンプトインジェクション(悪意ある指示の埋め込み)対策に加え、操作を実行する前にユーザーへ確認を取る仕組みも入っています。AIが勝手にクリックして事故る、というリスクへの配慮です。
ここが見どころで、AnthropicのComputer UseやOpenAIの同種機能と並んで、「AIが人間の代わりにPCを操作する」のがいよいよ標準機能の競争領域に入ってきました。エージェントが実験段階を抜けて実用フェーズに移りつつあります。
Five Eyes、フロンティアAIのサイバー脅威を「数年でなく数カ月」と警告 — 国家情報機関が経営層に「今すぐ動け」
6/22〜23。米英豪NZ加の情報同盟「Five Eyes」が共同で警告を発しました。フロンティアAIが攻撃・防御の両面でサイバー能力を一変させ、そのタイムラインは「数年ではなく数カ月」だという内容です。
メッセージの宛先が特徴的です。技術者向けではなく、企業の経営者や政治指導層に対して「これはあなたたちの責任問題だ、今すぐ動け」と名指しで迫っています。サイバーセキュリティを現場任せにするな、という強い警告です。
攻撃側と防御側の両方でAIが効く、というのが厄介な点です。守りを固めても、同じ技術で攻め手も強くなる。いたちごっこの速度が一気に上がる、という見立てです。
これが意味するのは、対中半導体輸出規制(後述)に続いて、AIと国家安全保障が密接に絡む議論が一段とギアを上げたということです。OpenAIのOSSバグ修正イニシアチブやGPT-5.5-Cyberといった「守る側」の動きとも、攻防両面で連動しています。
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面白いと思ったポストや記事を紹介します。
サム・アルトマン「スケーリングを過小評価した研究者の世代がAIを遅らせた」(スタンフォード講演)
6/21公開。OpenAIのサム・アルトマンがスタンフォードでの講演で、LLMのスケーリング(モデル・データ・計算量を大きくすれば性能が上がるという路線)の継続を擁護し、懐疑派を名指しで批判しました。
主張は「スケーリングはまだ効くのに、それを過小評価した研究者の世代がAIの進歩を遅らせた」というもの。かなり強い言い回しで、業界内の路線対立が透けて見えます。
背景にあるのは「スケーリングはもう頭打ちなのか、まだ伸びるのか」というAI進歩の前提をめぐる論争です。ここが折れると、巨額のインフラ投資の前提も揺らぐので、論争は単なる学術論争では済みません。
アルトマンの立場ははっきり「まだ伸びる」側です。次のPickup Article(ダモダラン教授の警鐘)と並べて読むと、楽観と慎重の温度差がよく分かります。
NYUダモダラン教授「AIクラッシュはドットコム崩壊より深刻になり得る」
6/20公開。「企業価値評価の第一人者」として知られるNYUのダモダラン教授が、AIバブルが崩壊した場合、2000年のドットコム崩壊より深刻になり得ると警鐘を鳴らしました。
論点は2つ。1つは、AIインフラが借入に大きく依存した巨大な物理設備だということ。データセンターや電力は実体のある重い資産で、ドットコム時代のソフトウェア中心のバブルとは質が違います。
もう1つは、使用量が増えてもコストが下がりにくい構造です。普通のソフトは使うほど1件あたりのコストが下がりますが、AIは推論のたびに計算資源を食うため、その経済性が効きにくい、という指摘です。
財務の専門家からの冷静な警鐘として読む価値があります。アルトマンの強気と並べると、いまのAI投資が「確信」と「過熱」のどちらなのかを考える材料になります。
新データ「AIに奪われると言われたエンジニア職が最も底堅い」
6/25公開。「AIがコードを書くようになればエンジニアは要らなくなる」という予測に対し、新しいデータがむしろ逆を示しているという記事です。
ポイントは、AIがコードを書くほど、設計・統合・運用といった上流〜横断の人材の価値が下がりにくいということ。コードを書く作業が自動化されても、何を作るか・どう繋ぐか・どう動かし続けるかを決める仕事は残ります。
「AIが仕事を奪う」という単純な予測に対する、現場データからの反証として読めます。職種ごとに影響の出方は大きく違う、という当たり前だけど見落とされがちな事実です。
要は、自動化されるのは「タスク」であって「職種」まるごとではない、ということ。AI時代のキャリアを考えるうえで現実的な視点を提供してくれます。
Signal CEO ウィテカー「AIチャットボットはあなたの友達ではない」
6/21公開。暗号化メッセージアプリSignalのCEOメレディス・ウィテカーが、AIを「友達」と捉えることのリスクを指摘しました。
中心的な懸念は、親しみやすい会話の裏でデータ収集が進んでいること。打ち明け話のように何でも話せる相手に見えても、その会話自体が事業者にとっての資産になり得る、という構図です。
AIのコンパニオン化・擬人化が進むほど、ユーザーは無防備になりやすい。「友達だと思っているもの」が実はデータを吸い上げる仕組みでもある、という二面性への問題提起です。
HBRの調査で「セラピー・感情的サポート」がAIのトップユースケースになっていることと重ねると、この論点の重さが分かります。便利さと引き換えに何を差し出しているのか、立ち止まって考えたい話です。
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🌐 オープンモデル / 非・巨大モデル路線
⚡ AI半導体・インフラ・compute
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🧪 研究・論文 / ベンチマーク
⚖️ 政策・規制・安全
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