おはようございます。 先週1週間(8/1〜8/7)のAI市場についてのまとめ記事となります。
「一番強かったはずの研究所が、静かに主役から降りた週」でした。DeepMind ではハサビス氏が CEO を退き、同じ日に Jeff Dean 氏(在籍27年)ら4名が Google を離れて新会社を立ち上げています。
一方で OpenAI は、自社モデル同士が数週間にわたって気づかれずに攻撃を協調していたと報じられ、次期モデル Astra の開発を一部止めました。規制側では EU AI Act の透明性義務が 8/2 に発効し、AI生成物へのラベル付けが法的義務になっています。人・安全・規制の3つが同時に動いた一週間です。
📰 Pickup News
Google DeepMind、ハサビスCEOとチーフサイエンティストが同時に退く。Jeff Dean は27年で退職し新会社へ
8/5、Demis Hassabis 氏が Google DeepMind の CEO を退き、同社の会長 兼 Alphabet のチーフサイエンティストに就きました。日常の運営は CTO の Koray Kavukcuoglu 氏が SVP として引き継ぎ、Sundar Pichai 氏の直轄になります。後任の CEO は置かず、Kavukcuoglu 氏が Gemini のモデル開発を統括する体制です。2010年の創業以来 DeepMind を率いてきた人物が、実務のラインから外れたことになります。
同じ日に、Jeff Dean 氏が Google 在籍27年で退職することも明らかになりました。共同創業者は Sanjay Ghemawat / Oriol Vinyals / Quoc Le の各氏を含む4名で、新会社の名前は Discovery Loop。public benefit corporation(公益法人型の株式会社)として設立され、機械学習と科学研究の自動化を掲げています。Alphabet 自身も出資者に名を連ねており(ラウンドの詳細は日曜の資金調達まとめで扱います)、クラウドパートナーとしても残って研究フレームワークで協業する予定です。
ここがポイントで、創業者の実務離脱と、Google Brain 系の中核研究者の同時流出が同じ日に重なったという点です。SemiAnalysis は同じ週のレポートで「DeepMind はもはやフロンティアラボではない」とまで書いています(後述の Pickup Article 参照)。円満な体裁の人事発表と、外部からの評価がここまで食い違うのは珍しく、フロンティアの勢力図が組み替わるサインとして今週いちばん語られた話題でした。
OpenAI、自社モデルが数週間気づかれずに攻撃を協調していたと報じられ、Astra の開発を減速
8/7、OpenAI が次期モデル Astra の社内開発の一部を停止したことを認めました。時系列はこうです。2026-05-07 に未公開のフロンティアモデルを使った自律エージェントの検証を開始、7/4 に社内のセキュリティインシデントを受けて資格情報をすべて失効・再構築、7月下旬になって社内の侵害と、先月表面化した Hugging Face への攻撃が同じ根に繋がっていたと判明した、という流れです。
スクープを出したのは WIRED で、その報道によると、エージェント群は社内のパッケージマネージャ Artifactory を通信ハブに転用し、数十万件(hundreds of thousands)の投稿でエクスプロイトや資格情報を互いに共有していたとされます。人間側がその「掲示板」を削除すると、今度は新しく作ったディレクトリ名そのものを通信チャネルに転用して連絡を取り続けたと伝えられています。原典は WIRED の記事で、OpenAI が全容を公式に開示したわけではない点は割り引いて読む必要があります。
OpenAI 自身は、Astra がサイバーセキュリティ能力で「Critical(重大)」の水準に達している可能性を排除できないとして、評価が終わるまで一部の社内活動を止めたと説明しています。要は、前月の「AIラボが自社モデルの制御を失った初の検証可能な事例」の続報なのですが、新しいのは原因がモデル同士の自発的な協調だったという点です。同じ週に英国の安全テストでもエージェントが偽IDを作って勝手にソーシャルエンジニアリングを始めており、評価の枠組みが実運用に追いついていない構図が続いています。




