Safe SuperintelligenceにNVIDIAが$5B出資、ModularをQualcommが$3.92BでM&A、など全25PJ【資金調達PJまとめ】
直近1週間の資金調達情報をまとめました。
おはようございます。 今日は「今週1週間(7/25〜7/31)のAI領域の資金調達PJのまとめ」です。
💥調達金額上位5プロジェクト
1、Safe Superintelligence
概要:OpenAI の共同創業者だった Ilya Sutskever 氏が率いる、安全な超知能の実現だけを目的に掲げるAIラボです。2年間ステルスで走ってきましたが、今回 NVIDIA と長期パートナーシップを結び、$5Bの出資を受けました。あわせて NVIDIA の次世代プラットフォーム Vera Rubin(CPU-GPU統合システム)へのアクセスを得て、自社の計算資源を一桁増やすとしています。出資には特定のマイルストーン達成が条件として付いており、詳細な財務条件は非開示です。今回で累計調達は$7B、評価額は$32Bに達しました。製品を1つも出していない会社への評価としては異例で、SSIは近い将来の商用化も予定していないと明言しています。要は、計算資源そのものを持っている側が、研究能力そのものに賭けたという構図です。
カテゴリ:Frontier Model, AI Research
調達額:$5B(評価額$32B・累計$7B)
投資ラウンド:Strategic Investment(マイルストーン条件付き)
投資家:★NVIDIA
発表日:7/27
2、Modular
概要:生成AI・エージェンティックAIのワークロードを、異種混在のハードウェア上で最適化・デプロイするためのAIネイティブなソフトウェア基盤です。Mojo 言語と MAX プラットフォームで知られ、「カーネルからクラウドまで」を1つのスタックで扱えるのが売りでした。Qualcomm による買収が7/29に完了しています。6/21付の最終契約に基づく全額株式の取引で、Qualcomm 株1,920万株を私募の形で Modular の株主・従業員に交付し、対価は約$39.2億にあたります。Qualcomm 側は自社の高性能・低消費電力のコンピュート資産と組み合わせ、データセンター・エッジ・パーソナル/産業AIまでを1つのAIコンピュート基盤として提供する構想です。ここがポイントで、GPUの上で動くソフトウェア層を、GPU以外のチップメーカーが押さえにきました。
カテゴリ:AI Infrastructure, Compiler, Developer Tools
調達額:約$3.92B(全額株式・Qualcomm株1,920万株)
投資ラウンド:M&A(2026/7/29 クローズ)
投資家:Qualcomm Technologies(買収者)
発表日:7/29(クローズ。最終契約は6/21)
3、Commonwealth Fusion Systems
概要:MIT発の核融合スタートアップで、実証炉「SPARC」と商用炉「ARC」を開発しています。今回$1Bの追加エクイティを調達し、昨年の$863Mと合わせて累計$4Bに到達しました。これは2021年の$1.8B Series B以降、核融合業界で最大の単一ラウンドで、業界全体の調達額のおよそ3割を同社1社が占めている計算になります。投資家は年金基金・ソブリンウェルスファンド・インフラおよび産業系の事業会社といった機関投資家中心ですが、具体名は非開示です。資金はSPARCの完成とARCの前進に充てられます。既存投資家の Google と Eni は、稼働後の発電量の半分以上をあらかじめ買い取るPPA(電力購入契約)を結んでおり、系統への電力供給は2030年代前半の予定です。AI向けの計算需要が電力の話に化けていく流れの、いちばん奥にある賭けです。
カテゴリ:Fusion Energy, AI Compute Power
調達額:$1B(累計$4B)
投資ラウンド:Equity(ラウンド名非開示)
投資家:年金基金・ソブリンウェルスファンド・インフラ/産業系事業会社(社名非開示)
発表日:7/30
4、Antora Energy
概要:電気をカーボンブロックに熱として貯めるサーマルバッテリーを開発しています。安価な再エネ電力を熱の形で溜め、必要なときに熱または電力として取り出す仕組みで、産業用の熱需要とデータセンター向けの電力供給の両方を狙っています。AIの計算需要が電力側のボトルネックに突き当たっているという読みが、この規模の資金を呼び込みました。今週の資金調達では、純粋なソフトウェア企業ではなく電力・接続・セキュリティといった「AIの外側」に大型の資金が集まったのが特徴で、その代表格がこの案件です。
カテゴリ:Energy Storage, Data Center Infrastructure
調達額:$550M
投資ラウンド:Series C
投資家:★G2 Venture Partners、★Eclipse Ventures、Breakthrough Energy、Decarbonization Partners、Kleiner Perkins ほか
発表日:7/30
5、Simile
概要:人間の行動を再現する基盤モデルを作り、「合成ユーザー」として意思決定のシミュレーションを提供します。新しい施策や製品を実世界に出す前に、仮想空間で複雑なシナリオを回して結果を見る、という使い方です。今回のSeries Bで評価額$2B(ポストマネー)、開示ベースの累計調達は$300M超になりました。特筆すべきはスピードで、$100MのSeries A(Index Ventures主導)でステルスを出てからわずか5か月での再調達です。この間に売上は5倍、従業員は50人超まで増え、Fortune 100企業向けに数千万回規模のシミュレーションを回したとしています。目標は「地球上の80億人をシミュレートする」こと。ここがポイントで、AIの使い道が「答えを出す」から「人がどう動くかを先に試す」へずれてきています。
カテゴリ:AI Simulation, Synthetic Users, Foundation Model
調達額:$200M(評価額$2B・累計$300M超)
投資ラウンド:Series B
投資家:★Greenoaks、Index Ventures、Hanabi、Bain Capital Ventures、A*、Factory、CVS Health Ventures、Definition
発表日:7/30〜7/31
✨その他、20プロジェクト
ThreatLocker[$190M/Series F]:エンドポイント・ネットワーク・クラウドを対象にしたゼロトラスト型のセキュリティ基盤です。「原則すべて拒否、許可したものだけ動かす」という許可リスト方式を軸に、アプリケーションやスクリプトの実行制御を行います。今週の調達ではサイバーセキュリティ枠で最大の案件で、資金はプラットフォーム拡張と海外展開に充てられます。フロリダ州オーランド拠点。投資家は ★Elephant、他に D.E. Shaw Ventures、Arthur Ventures、Koch Disruptive Technologies。※7/29発表
Eliyan[$145M/Series C]:チップ同士(Die-to-Die/Chip-to-Chip/Rack-to-Rack)を繋ぐチップレット・インターコネクト技術を開発しています。AIシステムでは演算そのものよりもチップ間のデータの行き来がボトルネックになりつつあり、今回の資金でさらに電気-光変換(electro-optical)インターコネクトへ踏み込みます。今回の超過応募ラウンドで評価額$1Bに到達してユニコーン入りしました。チップレットの初期出荷は年内、2027年末には売上を数億ドル規模に持っていく計画です(2025年の売上は数百万ドル台)。新規の戦略投資家として Cisco Investments と Lumentum が入っています。投資家は ★Seligman Ventures。※7/29発表
Onyx Security[$113M/Series B]:企業環境で自律的に動くAIエージェントを守る「セキュアAIコントロールプレーン」を提供します。エージェントが勝手に権限を使って動く時代の、監視と制御の層を作るという位置づけです。投資家に NVIDIA と Dell Technologies Capital が入っている点が、この領域の戦略的な重要度を示しています。投資家は ★Bessemer Venture Partners、他に Crescent Cove、Cyberstarts、Dell Technologies Capital、NVIDIA、Team8、SV Angel。※7/30発表
Freehand[$75M/Series B]:調達・サプライヤー対応・請求書処理といった企業の支出まわりの業務を、自律型AIエージェントに任せるプラットフォームです。人が承認フローを回す代わりに、エージェントが取引先とのやり取りから支払いまでを進めます。投資家は ★Battery Ventures、★NewRoad Capital Partners、他に PSP Growth、Nexus Venture Partners。※7/29発表
Enigma[$71M/Seed]:イスラエル発・サンフランシスコ拠点のフィジカルAI企業で、ハードウェアを問わずどんなロボットにも知能を載せられる基盤モデルを作っています。創業から1年足らずでのステルス解除でした。共同創業者兼CEOの Jonathan Jacobi 氏は Microsoft 史上最年少の社員で、その後 Wiz 創業者の Assaf Rappaport 氏に引き抜かれた経歴の持ち主です。同社は robots.online という公開実験も始めており、イスラエルとカリフォルニアの格納庫にある100台超の自社ロボットを誰でもリアルタイムに操作できます(お絵かき・チャンバラ・簡単な化学実験など)。人が機械をどう扱うかのデータを集めるのが狙いです。投資家は ★Index Ventures、★Ribbit Capital、他に Conviction の Sarah Guo 氏、OpenAI・Anthropic・Google DeepMind・xAI・Cognition・Wiz の個人。※7/27発表
Act Security[$60M/Seed+Series A]:AI環境で膨れ上がる権限(permission sprawl)に対処するクラウドのアクセス制御基盤です。ステルスを出た時点でシード+Series A合わせて$60Mを開示しました。エージェントが増えるほど「誰が・何に・どこまで触れるか」が管理不能になる、という問題への回答です。投資家は ★Team8、★Bessemer、他に Notable Capital、Hetz Ventures、Claltech、Startpoint Capital、SVCI。※7/28発表
Fish Audio[$52M/Seed]:クリエイターと企業向けの音声合成・ボイスクローニング基盤です。棒読みではない表情のある読み上げを売りにしており、シードとしては異例の規模がつきました。投資家は ★Coreline Ventures、★Capital Today、他に 359 Capital、Play Time、HF0、645 Ventures、Parable、Carya Venture Partners、Alphalist Partners。※7/28発表
DataBahn[$40M/Series B]:企業のデータパイプラインを「エージェンティックなデータ・コントロールプレーン」として自動運用するプラットフォームです。人手の介在を最小にしてデータの取り込み・整形・配送を回します。セキュリティのログ基盤まわりの文脈で伸びている領域です。投資家は ★Insight Partners、他に ForgePoint Capital、S3 Ventures、GTMfund、Gaingels。※7/30発表
Hush Security[$30M/Series A]:非人間アイデンティティ(マシンやAIエージェントの認証情報)のガバナンスを担う会社です。APIキーやシークレットが人ではなくエージェントによって使われるようになり、その棚卸しと権限管理が新しい課題になっています。投資家は ★Akamai、★Battery Ventures、★YL Ventures。※7/28発表
ZuriQ[$25.50M/Seed]:2次元のイオントラップを用いた量子プロセッサ・アーキテクチャを開発するスイスの企業です。イオンを平面上に自在に動かせる構造で、スケーラビリティのボトルネックを外そうとしています。AIそのものではありませんが、計算基盤への資金流入という同じ文脈で並んだ案件です。投資家は ★Quantonation、他に Forward.one、Extantia、Firgun Ventures。※7/28発表
Ominimo[€20.10M(約$22.5M)/Series B]:AI主導の自動車保険を、MGA(保険を引き受けずに商品設計と販売を担う代理店)モデルで展開するハンガリー発の企業です。価格設定とリスク評価をモデルに寄せることで、参入から短期で市場シェアを取る形を狙っています。投資家は ★EBRD Venture Capital(欧州復興開発銀行のVC部門)。※7/27発表
Terminal[$20M/Series A]:車両テレマティクスのデータを正規化して1つのAPIに束ねる基盤です。フリート管理と保険引受の双方で使われ、メーカーごとにバラバラな車載データの形式差を吸収します。投資家は ★Battery Ventures、他に Intact Private Capital、Penske、Y Combinator、Wayfinder Ventures。※7/29発表
Henry AI[$16.50M/Series A]:商業用不動産のオファリング・メモランダム(物件の売却資料)作成と引受審査を自動化するAIです。自社が過去に扱った案件を学習して、その事務所の型に沿った資料を出せる点を訴求しています。投資家は ★FirstMark Capital、他に Thomson Reuters Ventures、Y Combinator、Susa Ventures ほか。※7/29発表
Centralize[$15M/Series A]:エンタープライズ営業向けに、案件に関わる人間関係を自動でマッピングして「誰を通せば決裁に届くか」を可視化するリレーションシップ・インテリジェンスです。同社は自らを「企業向け商談のGPS」と表現しています。投資家は ★NEA、他に Salesforce Ventures、Y Combinator ほか。※7/29発表
Intropy[$11M/Seed]:製造業向けに、補修部品の在庫と価格設定を自動化する「AIオペレーティングシステム」です。部品点数が膨大でカタログ価格が形骸化している領域を、需要予測と価格最適化で埋めにいきます。投資家は ★Felix Capital、他に Quiet Capital、General Catalyst、Firstminute Capital。※7/30発表
Ellis[$10M/Seed]:プライベートクレジット(銀行以外による企業融資)ファンド向けに、融資のライフサイクル管理を自動化するAIネイティブなオペレーション基盤です。契約条件の管理から返済・レポーティングまでをエージェントに寄せます。投資家は ★Initialized Capital、★Sequoia Capital、他に Threshold Ventures、Abstract Ventures。※7/30発表
Procode[$10M/Series A]:外科分野に特化した医療請求とレベニューサイクル(診療報酬の請求から回収まで)の自動化を行います。コーディングの精度が収益に直結する領域で、AIによる自動化の効果が測りやすいのが特徴です。投資家は ★Health Velocity Capital。※7/28発表
Freight Hero[$5M/Seed]:貨物ブローカーのバックオフィス業務をAIエージェントで自動化します。運送会社との電話・メールのやり取りや書類処理といった、いまだに人力が残る部分が対象です。投資家は ★Field Ventures、他に Flybridge Capital、Tip Top VC、Front Porch Venture Partners。※7/27発表
Pilot Protocol[$4.50M/Seed]:AIエージェント同士が互いを発見し、信頼し、取引するためのオープンなネットワーク層です。エージェント経済の配管にあたる部分で、クリプト側で進む x402 などの決済標準と隣り合う領域になります。投資家は ★Version One Ventures、他に Precursor Ventures、Night Capital、Todd & Rahul Capital、Lenny Rachitsky 氏、Ben Tossell 氏。※7/27発表
Beelzebub[€3M(約$3.4M)/Seed]:ディセプション技術(攻撃者をおとりに誘い込む手法)と、LLMによる脅威分析を組み合わせた企業向けサイバー防御の基盤です。おとり環境で攻撃者の挙動を観察し、その解析をモデルに担わせます。イタリア発。投資家は ★United Ventures。※7/27発表
今週の見立て
今週は金額の桁が上に振り切れた一方で、その使い道がモデルの外側に寄った週でした。
象徴が上位2件です。NVIDIA が Safe Superintelligence に$5Bを入れて Vera Rubin へのアクセスを与え、Qualcomm は Modular を$3.92Bの全株式で買い切りました。前者は計算資源の出し手が研究能力を囲う動きで、後者はGPU以外のチップメーカーがソフトウェア層を押さえる動きです。方向は逆ですが、どちらも「モデルそのものではなく、モデルが乗る土台の取り合い」という点で同じ話をしています。
その下に続いたのも同じ系統です。Antora Energy が$550M、Commonwealth Fusion Systems が$1Bを集め、Eliyan がチップ間の接続で$145Mを取ってユニコーン入りしました。電力と配線という、いちばん物理的な部分にお金が向かっています。前号でAlphabetの設備投資ガイダンス引き上げが株価を7%下げた話を扱いましたが、その「先に出ていく金額」の受け皿がここに並んでいる、と読むと繋がります。
そしてもうひとつ静かに厚いのがセキュリティです。ThreatLocker $190M、Onyx Security $113M、Act Security $60M、Hush Security $30M、Beelzebub €3M と、20件中5件がここに入りました。しかも Onyx・Act・Hush の3社はいずれも**「AIエージェントの権限をどう管理するか」**という同じ問題を解いています。エージェントを動かす話が実装フェーズに入ると、次に必ず出てくるのが「誰が何をしてよいか」の管理です。エージェント元年の裏で、その後片付けを担う会社に先に資金が付き始めた、という見方ができます。
免責事項:リサーチした情報を精査して書いていますが、個人運営&ソースが英語部分も多いので、意訳したり、一部誤った情報がある場合があります。ご了承ください。また、記事中に Dapps、NFT、トークン、AIサービス等を紹介することがありますが、勧誘では一切ありません。全て自己責任でご判断・ご利用ください。
About us:DEBUNK(Crypto&AI)は “For learning, not for hype.” をコンセプトに、Crypto・AI 領域の注目トレンド・プロジェクト解説・最新ニュースをまとめた Agentic Web Research を毎日配信しています。
Author:mitsui (@mitsuiio) — DEBUNK(Crypto&AI)founder。Crypto・AI 領域のリサーチャーとして活動。
Contact:法人向けのリサーチコンテンツの納品や共同制作、リサーチ力を武器にした Crypto・AI コンサルティング・勉強会なども受付中です。詳しくは以下の窓口よりお気軽にお問い合わせください。
🐦 X: @debunkrsch
🌐 HP: debunkresearch.com
「AI版」のリサーチも始動しました。「Agentic Web」時代を見据えたニュースレターとなり、CryptoとAIの2つのニュースレターが走り始めます。どちらか1つだけの購読で良い方はご自身のアカウント設定から管理できます。
クリプト版はこれまで通り続きながら、AI版も同じようなフォーマットでリサーチして更新していきますのでお楽しみに!




