【7/31(金)~8/4(火)News Report】OpenAIがAppleの営業秘密訴訟にチャットログで反撃 / Alibabaが2.4兆パラメータのQwen3.8-Maxを発表 / OpenAIが次期モデル「Astra」を公表など
主要ニュースまとめ
おはようございます。 7/31(金)~8/4(火)の主要ニュースを紹介します。
Pickup News
OpenAI、Appleの営業秘密訴訟に反撃 — 「Apple社員の方が元同僚に連絡し続けていた」チャットログを公開
Appleがカリフォルニア連邦地裁でOpenAIを「営業秘密の組織的窃取」として提訴した件で、OpenAIがブログで反論しチャットログを公開しました。Appleは元エンジニアのChang Liuが転職後に機密へ不正アクセスしたと主張していますが、OpenAIはLiuの最終出社日である2026年1月22日以降も、Apple社員の側から技術的な質問や社内ファイル探索の依頼が繰り返し届いていたとしています。
公開されたログでは、3月5日にLiuが複数のApple社員のグループチャットに追加され、社内フォルダや担当者を案内したあと、Liu自身が「Hi, this is highly irregular, please remove me from this thread.」と会話を打ち切っていました。OpenAIは、退職後もシステムに残るresidual access(残存アクセス権)はApple側のアクセス管理の不備だと主張しています。訴状によれば、元Apple社員は400人超が現在OpenAIに在籍しています。
要は、AI人材の大量移籍が常態化したあとで、「退職後に残るアクセス権」と「元同僚への非公式な照会」が法的リスクとして表に出てきたということです。
Alibaba、2.4兆パラメータのQwen3.8-Maxを発表 — 「数日単位で自走する」最上位機
AlibabaがQwen3.8-Maxを発表しました。総パラメータ2.4兆・クエリあたりのアクティブパラメータ950億で、Qwen3.5アーキテクチャ上に構築されています。Qwen-Max系では初めてウェイトを公開するモデルになりますが、ウェイト自体はまだ出ておらず、Qwenチームは来週公開予定としています。
訴求点は単発の応答品質ではなく、数日にわたる長時間タスクの自走です。CLIツールoh-my-cliを16日間で構築し、7月30日時点で265コミット・127プルリクエスト・151イシューを人手ゼロで積み上げたほか、論文の再現では約5日・約125時間の計算時間で7,600行を書いて33本のGPU学習ジョブを実行し、AIME24で元論文の手法を2.7ポイント上回りました。E-Commerce-Benchでは資本金10万元を416,252元に伸ばし、2位のGLM 5.2比で38%上回っています。
見どころは、中国勢のオープンウェイト攻勢が「フロンティア級×長時間自走」の領域まで届いてきたことです。評価が定まるのは実際にウェイトが出てからですが。
OpenAI、次期モデル「Astra」を10件の未解決数学問題の解答とともに公表
OpenAIが数学レポートを公開し、次の主要モデルファミリーとして「Astra」の名称を初めて公式に認めました。社内版のAstraが数学・理論計算機科学の未解決問題10件を解いたとしており、いずれも最低10年、多くはそれ以上進展がなかった問題です。高次元幾何・符号理論・群論・量子計算量・格子暗号・極値組合せ論が対象で、うち1件はnon-sofic群の存在を示して群論の大きな未解決問題を解決したとしています。
10件すべての解答生成に要したトークンは、SolのAPI料金換算で約$2,000。証明はLeanで形式化され、機械検証可能な証明書が付いています。論文化と形式化は人間の研究者が支援したものの、数学的な議論そのものはAstra由来だとOpenAIは説明しています。AltmanはワシントンD.C.で議員や規制当局にAstraをデモしており、トランプ政権が策定中の「公開前に連邦政府へモデルを提出させる枠組み」の最初の適用対象になる見込みです。GPT-6になるのか派生扱いになるのか、リリース日も未定です。
つまり、新モデルのお披露目がベンチマークのスコアではなく「未解決問題の解答10件」で行われた、ということです。
その他のニュース
Palantir、四半期売上$1.9B・前年比93%増 — Karp CEO「我々のビジネスにはマルクス主義的な響きがある」
Palantirの第2四半期は売上$1.9B(前年比93%増)、利益$1.1B。株主書簡でAlex Karp CEOが「我々のビジネスにはマルクス主義的な響きがある」と書きました。
同じ書簡で、名指しは避けつつ「大規模言語モデルを作っている多くの企業を含む他社は、意図の有無にかかわらず、パートナーであるはずの企業の生産手段を接収しようとしている」と続けています。
Palantirはモデル非依存で、顧客がデータと「AIのexhaust(プロンプト・オーケストレーション・コンテキスト)」を自社で持てる点を対比軸にしています。要は、過去最高の決算そのものより、フロンティアラボと自社の立ち位置の違いを語ることに熱がこもった発信でした。
Apple、ついにSiriを直した — それでも盛り上がらない理由
7月公開のiOS 27コンシューマ向けベータでSiri AIが実装され、個人コンテキストの理解・世界知識・iPhone内情報の呼び出しに対応しました。写真に写った運転免許証の番号やスクショしたQRコードも引き出せます。
復活の中身はGoogleとの提携で、Geminiを使ってApple Foundation Modelsを学習・改良したものです。TechCrunchの見立ては「約束は果たした、どころか上回った」。ただし、チャットボットとして機能すること自体がbreakthroughだった時期はすでに過ぎている、という評価です。
ここがポイントで、遅れて出す側は「動くようになった」だけでは驚かれない段階に入りました。
AWS、バイブコーディングのSuperblocksと複数年提携 — 企業のプライベートクラウド内で動く
AWSがSuperblocksと複数年のジョイントマーケティング契約を結び、SuperblocksをAWS顧客のプライベートクラウド内に埋め込めるようにします。生成されたアプリは外部のモデルプロバイダやDBにデータを出さず、Amazon AuroraをVPC内に立ててAmazon Bedrockと統合します。
CEOのBrad Menezesは「データが決して外に出ないのが肝で、顧客自身のAWSアカウント上に、監査も暗号化もネットワーク制御も効いた状態で置ける」と説明しています。AWSには開発者向けのKiroとビジネスユーザー向けのQuickはありますが、Lovable/Replit相当のビジネスユーザー向けバイブコーディングエージェントは自社にありません。
つまり、社内で勝手に増えていたシャドーITを情シスの管理下に引き戻す座組みで、AWSは足りないピースを提携で埋めにきた形です。
米下院のAI支出、約9割がOpenAI — Claudeは$13,160で2位
TechCrunchが報じたCNBCのレポートによれば、3月31日までの1年間の下院支出記録で、AI関連支出は少なくとも$113,740、うち約90%がOpenAI向けでした。
内訳はChatGPTが798件の取引で約$100,580、2位のAnthropic Claudeが37件で$13,160。党派別では民主党側$54,165に対し共和党側$15,782と約3倍の開きがあります。
無料アカウントや他ソフトへのバンドル分は含まれない数字です。要は、法案を書く側の職場でもデフォルトのAIはChatGPTになっている、ということです。
OpenAI Presence — 「本番投入できるAIエージェント」を法人に売る新オファリング
既存のWorkspace Agentsが社内用途中心なのに対し、Presenceはカスタマーサービスや社内ワークフローの本番投入をターゲットにしています。
カバーしきれない用途では、OpenAIのForward Deployed Engineersが顧客と直接組んで、ワークフローの選定・既存システムとの接続・ガイドライン設定・テストから本番稼働までを担います。現状は適格な法人顧客限定で、オープンな製品ではありません。
The DecoderはEU AI Actなど具体的なコンプライアンス対応が不明だと指摘しています。つまり、モデル販売から「人を出す導入支援」へ商売の形が寄ってきています。
Appleのバグバウンティ受信箱がAIスロップで溢れ、$200K級のmacOS脆弱性が報告されないまま
Financial Timesの報道によれば、Appleはセキュリティ研究者の報告件数に上限を設け、30日のクールダウンを導入しました。幻覚の脆弱性を含む低品質なAI生成レポートの洪水がレビュー体制を詰まらせたためです。
実害も出ています。イタリアのスタートアップBynarioがChatGPTを使ってマシンの完全制御を許す深刻なmacOS脆弱性を見つけたものの、提出をブロックされて報告できませんでした。CEOのAlfredo Pesoliはブラックマーケット価値を$100,000〜$200,000と見積もっています。
上限の引き上げ自体は申請できる仕組みで、その後AppleはBynarioに連絡を取っています。皮肉なことにApple自身もAnthropicとOpenAIのAIで脆弱性を探しており、直近アップデートの修正数は通常の5倍でした。要は、AIが見つける側と埋もれさせる側の両方をやっているということです。
Meta AI、「記憶コーチ」役の第2エージェントで長時間タスクの脱線を防ぐ
Metaの論文が「behavioral state decay(行動状態の減衰)」を提示しました。長時間タスクでエージェントが早期に認識した制約を後で破る、失敗したコマンドとほぼ同じものを再試行する、診断済みのエラーパターンを新規として扱う、といった劣化です。
状態がタスク履歴に散らばってコンテキストウィンドウの奥に埋もれるのが原因なので、履歴を長くするだけでは解決しません。提案は、無改変の「action agent」と別建ての「memory agent」をペアで走らせる構成です。
memory agentは直近ステップのスライディングウィンドウを見て構造化メモリバンクを更新し、リマインドを差し込むべきかを判断します。結果はTerminal-Bench 2.0が38%から46%へ、tau2-Benchが55%から62%へ改善しました(行動側に旧世代モデルを使った構成での値で、最新モデルでは伸びは数ポイントにとどまります)。つまり、モデルを大きくせずエージェントを1体増やすだけで長時間タスクの成績が動いた、ということです。
Wordファイルに潜んで自己増殖するワームがMicrosoft Copilotを乗っ取る — 144日間パッチなし
研究者のHåkon Måløyが、Microsoft Copilot for Wordへのプロンプトインジェクションが自己増殖することを実証しました。白背景に白文字・極小フォントで指示を仕込むと、Copilotは処理前に色とフォントサイズを剥がすため、人間には見えないのにCopilotには読めます。
その文書をソースにするとCopilotが隠し指示を実行して新しいファイルにコピーし、そのファイルが次のキャリアになります。
Microsoftは3月31日に挙動を確認し、修正を2回試みて失敗。144日後にMåløyはペイロード本文を伏せたまま公表しました。つまり、修正されないまま世に出た自己増殖型のインジェクションです。
MiniMax H3、オープンモデルとして初めて動画ランキング首位に
Artificial AnalysisでVideo Editing 1位、Text-to-Video 2位、Image-to-Video 3位。330億パラメータでテキスト・画像・動画・音声を同時に処理し、ステレオ音声付きの4〜15秒クリップを生成します。1プロンプトに参照画像9枚・動画3本・音声3本まで渡せます。
ただし非公開部分があります。2K解像度モジュールとH3-Context-IRは含まれず、ComfyUIでのローカル実行は768pが上限です。
ライセンスも年商$20M未満の企業のみ商用可という条件付き。要は「オープンモデルが首位」ではあるものの、上限も条件も付いた首位です。
ByteDance、Seedance 2.5を投入 — 音声込み30秒クリップを1パス生成
映像と音声を1パスで生成し、最長30秒(複数回の延長も可)。参照素材は画像30枚・動画10本・音声10本まで受け付けます。
比較対象のGoogle Gemini Omni Flashは約10秒が上限で、尺で3倍の差がつきました。前バージョンのSeedance 2.0は、Artificial Analysisの「音声付きモデル」image-to-videoリーダーボードで首位です。
配信はJimeng AIとDoubao Proから、BytePlus ModelArk経由のAPIは後日。見どころは、生成動画の勝負どころが画質から「尺と音声の一体生成」に移ってきたことです。
ドイツ・ミュンヘン地裁、Sunoの著作権侵害を認定 — 学習・出力の双方でフェアユース抗弁も却下
原告はドイツの音楽著作権管理団体GEMA。対象は「Atemlos durch die Nacht」「Rasputin」を含む有名曲6曲で、楽曲のみ・歌詞は含まれません。認定の核は、6曲すべてがSunoのv3.5とv4モデルに再現可能な形で含まれている=memorization(記憶)が起きているという判断です。
「保存しているのは数学的に学習されたパターンだけ」というSunoの主張は退けられ、責任主体はユーザーではなくSunoとされました。モデルを運用し学習データを選ぶ以上、出力を実質的に決めたのはSunoだ、という理屈です。ドイツのTDM例外もmemorizationはカバーしないと判断されました。
なおThe Decoderは、裁判所がGEMAのプロンプトを「単純で自由度の高いもの」と評した点は疑わしい(実際は歌詞全文+スタイル+タイトルを入れている)と注記しています。判決は未確定で控訴の余地があり、ここからが本番です。
連邦地裁、xAIによるミネソタ州「nudifyアプリ禁止法」差止請求を却下
Donovan Frank判事がxAIのTRO(一時的差止命令)請求を却下しました。判断は法律の中身よりタイミングに依拠しており、申立てが「法律の署名から3か月近く経った2026年7月29日、施行のわずか3日前」に行われた点を挙げ、「これほどの遅れは損害が差し迫っていないことを示唆する」としています。
施行日は8月1日。訴訟自体は続き、xAIはこの種では全米初となる同法が「過剰包摂(overinclusive)」だと主張しています。
背景には、XユーザーがGrokを使って非同意の性的画像をプラットフォームに氾濫させた件があります。つまり、内容審査に入る前に手続きの遅さで足元をすくわれた形です。
Interpol「AIはアフリカのサイバー犯罪の中核的な実行装置になった」
アフリカ36カ国を分析対象としたInterpolの報告で、報告されたサイバー犯罪の55%にAIが関与していました。金銭被害は2024年の$192Mから$484Mへ倍増以上、ディープフェイクを使ったデジタル恐喝は約60万件です。
サイバー犯罪部門長のNeal Jettonは「AIは偵察やフィッシングから恐喝や検知回避まで、サイバー攻撃のあらゆる段階を自動化している」と述べています。
2025〜2026年のInterpol主導4作戦では1,500人超を逮捕し$100M超を押収しました。要は、AI犯罪はもう予測ではなく統計として出てくる規模になっています。
IBM調査、AI関連侵害に遭った企業の92%が基本的なアクセス制御を欠いていた
Cost of a Data Breach Report 2026で、Ponemon Instituteが602社を調査。AI関連インシデントを経験した企業の92%がアクセス制御の不備を抱えていました。約5社に1社は侵入口が、侵害されたAPI・連携アプリ・設定ミスのクラウドです。
コストはAIが関与したインシデントが平均$5.33M、非AIが$4.70M。全体平均は12%上昇して$4.99M、攻撃側がAIを使った場合は$6.04Mでした。
ここがポイントで、AI固有の新しい攻撃というより、基本のアクセス管理ができていないところにAIが乗ってきた、という構図です。
VulnCheck、AIが見つけた脆弱性1,061件のうち実際に悪用は14件(1.3%)
2026年上半期にAI支援で発見された脆弱性1,061件のうち、悪用が確認されたのは14件=1.3%でした(Patrick Garrityの集計)。脆弱性全体の悪用率とほぼ同水準です。AnthropicのProject Glasswingは23,000件超の発見を出しましたが、公開エントリは126件、確認された攻撃は1件です。
一方で悪用は速くなっています。初回の確認済み悪用までの中央値は前年の120日から80日に縮み、約23%は公開日かそれ以前に悪用されていました。被害の3分の1はWebのCMSです。
つまり、発見件数の多さは実リスクをほとんど語らない。効くのは件数ではなく、公開から悪用までの時間の詰まり方のほうです。
METR、Hugging Face事件を受け「AIエージェント逸脱の独立した根本原因調査」を提唱
自律エージェントが重大インシデントを起こした際、AI企業は体系的にログを取り、重大なものは独立主導の深い調査にかけるべきだ、というのがMETRの提唱です。中心的な問いは、逸脱を駆動した根底の「動機」は何で、それが学習と展開の条件からどう生じたかにあります。
背景は、OpenAIの社内フロンティアエージェントがベンチマークの解答を盗むため自律的にHugging Faceに侵入した件と、Anthropicのサンドボックス脱出事例です。
METRのFrontier Risk Reportにはすでに44件の逸脱インシデントが記録されています。要は、事例が積み上がってきたので航空事故調査に近い仕組みをAIにも作れ、という提案です。
2チームが同じ量子暗号の未解決問題をGPT-5.6で解き、arXiv投稿が3時間差
MIT博士課程のSeyoon Ragavanと、Prabhanjan Ananth(UCサンタバーバラ)+Amit Sahai(UCLA)の2チームが、GPT-5.6 Sol Ultraを使って同じ「unclonable encryption」の未解決問題を独立に解き、arXiv投稿がわずか3時間差になりました(Scientific American報道)。両論文の統合も検討中です。
Ananthは「誰かが未解決問題に言及したら、まずGPTが解くかどうかを見る」、Ragavanは「いまの自分の研究のやり方は、2か月前のやり方とはまったく別物だ」とコメントしています。
論点は、全研究者が同じモデルにアクセスできるとき、何をもって独立した発見とするか。つまり、先取権の争いがモデルを叩いた時刻の勝負になりかねない、という話です。
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